耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
重ね合わせた唇は、少しひやりとしていた。
小さくて柔らかい唇は熟れた果実のように甘く、何度でもいつまでも味わっていたくなる。触れ合わせただけでは物足りなくて、薄く開いた唇の間から舌を差し込みたくなる。
(この前のように、もう泣かせたりしない……)
あの日。怜の部屋に美寧がコーヒーを届けてくれた日。
怜が自分の部屋で彼女から『私でいいの?』と言われ驚いた。
「好きだ」という自分の気持ちを疑われた、とまでは思わないが、完全に信じきれてはいないと感じた。
どう言ったら、彼女に自分の気持ちが伝わるのだろうか。
そう考えていた時、美寧の発した名前に、自分の中で何かが弾けた気がした。一瞬で冷静さを欠いた。
あの『神谷』とかいう学生の言葉は信じるのに、自分の言うことは信じられないのか———
そんなふうに思ってしまった。
あとから冷静な頭で考えれば、そんなはずないと分かる。
美寧が自分に自信がないことは薄々感じていた。だからあれは怜の気持ちを疑ったのではない。きっと怜の言葉で安心したかったのだろう、と。
美寧の涙を見て我に返った時には、もう遅かった。怜は自分が彼女の笑顔を奪ってしまったことを深く後悔した。
それから二週間以上経った今でも、以前のような深いくちづけはしていない。
それは美寧を怖がらせたくない気持ちと同時に、暴走した自分が彼女を泣かせることが怖かった。自分が見たいのは彼女の“笑顔”であって、“泣き顔”ではないのだ。
グッと奥歯に力を込め、深く口づけたい衝動を堪えた。