耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
唇を離した美寧が、顔を隠すように怜の胸にしがみ付いた。

「ミ、ネ———」

口から出た声が、自分でも驚くほど掠れていた。

ぎゅっとシャツを握られる。垂れた髪の隙間から見える耳が、真っ赤に染まっている。

怜の胸の上で顔を伏せていた美寧が、少しだけ顔を持ち上げた。案の定、その顔は真っ赤だ。ビー玉のように透き通った丸い瞳は、潤んでキラキラと光っている。

もう一度ぎゅっと怜のシャツを握りしめた美寧が、小さな声で言った。

「私も欲張りになっちゃったのかな……前みたいなキスじゃないと寂しいって思っちゃうのは………」


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ぐつぐつと煮える鍋の横で大根を切りながら、怜はふぅっと息をつく。

自分でもよく耐えたと思う。
珍しく自分を褒めたくなった。

不用意に落とされた爆弾の衝撃に怜が耐えているうちに、美寧がさっと彼の上から退いた。そして、すぐそばに置いてあったスケッチブックと色鉛筆を抱え、『ちょっとだけお散歩に行ってくるね!』と、バタバタ出かけて行ってしまった。


破壊力抜群の美寧の言動に、いったい自分はいつまで耐えられるのだろうか。
美寧をもっと深く愛したい。けれど彼女が嫌がることは絶対にしたくない。泣かせたくない。
二つの望みが天秤のように傾いては戻り、また傾く。

十分すぎるほど“大人”なこの年になって、こんな青臭い二律背反に揺れると思わなかった。

けれど、可愛すぎる恋人に振り回されるのも悪くない。
彼女がそばに居てくれるのなら、このままでも構わない。このままずっと天秤の上で揺らされていたいとすら思うのだ。




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