耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]
己の《《失態》》に混迷するあまり、完全に意識が自分の内側に入っていた美寧。
足元を照らす街灯の光に、ハッと我に返った。
「いつの間に………」
公園も商店街も通り抜け、駅前まで来てしまっていた。
その上、さっきまで真っ赤に燃えるようだった空は、西の山の端に少しのオレンジ色を残して藍色のグラデーションで彩られている。
いつのまに時間も場所も飛び越えたのだろうか。
「早く帰らなきゃ……」
日が暮れても帰って来なかったらきっと怜が心配する。
それでなくても、最近は『不審者が出るから気を付けるように』と何度も言われているのに。
冷たい夜風に体が冷えたのか、小さくぶるりと身震いをする。慌てて踵を返そうとしたその背中を、後ろから誰かがポンと叩いた。
振り向いた美寧は目を丸くした。
「神谷さんっ!」
後ろに立っていたのは神谷だった。
「神谷さん……どうして……?」
「マスターのお遣いでスーパーに。帰ろうとしたらちょうど美寧ちゃんが通りかかって、声を掛けたんだけど……」
神谷がスーパーの前で声をかけた時には気付かなかったらしい。
「それよりも今から出かけるところ?」
駅に向かっていたからそう見えたのだろう。
「ちがいます。ちょっと散歩に」と首を振った美寧に、神谷が「もう暗いから危ないよ」と言う。
最近マスターが口癖のように『不審者が出るから美寧も気をつけろ』と言っているのを、彼も聞いていた。
「もう帰るところなので」と美寧が言うと、神谷は「じゃあ一緒に戻ろう」と歩き出した。
今いる駅前から商店街のアーケードをくぐったすぐにスーパーがある。そして【カフェ ラプワール】は商店街の一番奥。そしてそこからすぐの公園を通り抜けたところに、美寧と怜が暮らす藤波家はあった。
己の《《失態》》に混迷するあまり、完全に意識が自分の内側に入っていた美寧。
足元を照らす街灯の光に、ハッと我に返った。
「いつの間に………」
公園も商店街も通り抜け、駅前まで来てしまっていた。
その上、さっきまで真っ赤に燃えるようだった空は、西の山の端に少しのオレンジ色を残して藍色のグラデーションで彩られている。
いつのまに時間も場所も飛び越えたのだろうか。
「早く帰らなきゃ……」
日が暮れても帰って来なかったらきっと怜が心配する。
それでなくても、最近は『不審者が出るから気を付けるように』と何度も言われているのに。
冷たい夜風に体が冷えたのか、小さくぶるりと身震いをする。慌てて踵を返そうとしたその背中を、後ろから誰かがポンと叩いた。
振り向いた美寧は目を丸くした。
「神谷さんっ!」
後ろに立っていたのは神谷だった。
「神谷さん……どうして……?」
「マスターのお遣いでスーパーに。帰ろうとしたらちょうど美寧ちゃんが通りかかって、声を掛けたんだけど……」
神谷がスーパーの前で声をかけた時には気付かなかったらしい。
「それよりも今から出かけるところ?」
駅に向かっていたからそう見えたのだろう。
「ちがいます。ちょっと散歩に」と首を振った美寧に、神谷が「もう暗いから危ないよ」と言う。
最近マスターが口癖のように『不審者が出るから美寧も気をつけろ』と言っているのを、彼も聞いていた。
「もう帰るところなので」と美寧が言うと、神谷は「じゃあ一緒に戻ろう」と歩き出した。
今いる駅前から商店街のアーケードをくぐったすぐにスーパーがある。そして【カフェ ラプワール】は商店街の一番奥。そしてそこからすぐの公園を通り抜けたところに、美寧と怜が暮らす藤波家はあった。