耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「藤波准教授って、ラプワールによく来るんだね」
「え、」
公園に入った途端、神谷が出し抜けに言った言葉に固まる。すると神谷は「先生、ラプワールの常連かぁ」と呟いた。
神谷の言う通り、ここ最近怜は以前より頻繁にラプワールに顔を出す。
土曜日や大学や出張の帰りに顔を出した彼と、仕事上がりの美寧はラプワールの外で合流し一緒に帰っている。
きっと『不審者』を警戒して、美寧の帰り道を心配してくれているのだろう。
アルバイトに入ったばかりの神谷から見たら”常連客”と“アルバイト店員”。
それは間違いではない。間違いではないが———
「いえ、あの神谷さん……私実は、」
怜の家で暮らしていることを言い出そうとした時、神谷が言った。
「颯介で———」
「え?」
「『神谷』じゃなくて、『颯介』でいいから。だって美寧ちゃんの方が年上なんだし」
「あ………」
「昨日はごめん。すごく失礼だったって反省したんだ」
神谷が言っているのは美寧のことを『年上に見えない』と言った時のことだろう。
「女性に年齢のことであれこれ言うなんて失礼すぎたよね。本当にごめん」
重ねてそう言った神谷に、美寧は「ううん」と首を振る。つい少し前までぐずぐずとそれに拘っていた自分が恥ずかしくなる。
「もう気にしてないですから」と口にすると、神谷は眉を下げ、子犬のような丸い瞳を少し伏せて申し訳なさそうに言った。
「本当は『杵島さん』って呼ばないといけないんだろうけど、もう『美寧ちゃん』で定着しちゃったし、僕のことも『颯介』って呼んでくれたらいいから」
「颯介さん、ですか?」
「う~ん、なんか硬いよね……君付けでいいよ、僕の方が年下なんだし」
「颯介……くん?」
「うん、そう!あ、敬語もナシね!」
「は、はい。あっ、えっと……うん」
上手く切り替えられない美寧を見て、神谷が「あはは、頑張って」と笑う。
笑顔の向こう側には、上弦の月が浮かんでいた。
「え、」
公園に入った途端、神谷が出し抜けに言った言葉に固まる。すると神谷は「先生、ラプワールの常連かぁ」と呟いた。
神谷の言う通り、ここ最近怜は以前より頻繁にラプワールに顔を出す。
土曜日や大学や出張の帰りに顔を出した彼と、仕事上がりの美寧はラプワールの外で合流し一緒に帰っている。
きっと『不審者』を警戒して、美寧の帰り道を心配してくれているのだろう。
アルバイトに入ったばかりの神谷から見たら”常連客”と“アルバイト店員”。
それは間違いではない。間違いではないが———
「いえ、あの神谷さん……私実は、」
怜の家で暮らしていることを言い出そうとした時、神谷が言った。
「颯介で———」
「え?」
「『神谷』じゃなくて、『颯介』でいいから。だって美寧ちゃんの方が年上なんだし」
「あ………」
「昨日はごめん。すごく失礼だったって反省したんだ」
神谷が言っているのは美寧のことを『年上に見えない』と言った時のことだろう。
「女性に年齢のことであれこれ言うなんて失礼すぎたよね。本当にごめん」
重ねてそう言った神谷に、美寧は「ううん」と首を振る。つい少し前までぐずぐずとそれに拘っていた自分が恥ずかしくなる。
「もう気にしてないですから」と口にすると、神谷は眉を下げ、子犬のような丸い瞳を少し伏せて申し訳なさそうに言った。
「本当は『杵島さん』って呼ばないといけないんだろうけど、もう『美寧ちゃん』で定着しちゃったし、僕のことも『颯介』って呼んでくれたらいいから」
「颯介さん、ですか?」
「う~ん、なんか硬いよね……君付けでいいよ、僕の方が年下なんだし」
「颯介……くん?」
「うん、そう!あ、敬語もナシね!」
「は、はい。あっ、えっと……うん」
上手く切り替えられない美寧を見て、神谷が「あはは、頑張って」と笑う。
笑顔の向こう側には、上弦の月が浮かんでいた。