耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「あ、でも大丈夫だよ。先生は全然気にしてなさそうだったし」

怜の方も特に美寧にあれこれと話しかけたりはしない。一人静かにコーヒーを味わっている。いつも客の一人として、【カフェ ラプワール】のコーヒーと空間を楽しんでいるように見える。
マスターもあれこれと美寧と怜のことを訊いたりしない。他のお客に接するのと何ら変わらない態度だ。

ゆっくりとコーヒーを飲んだ怜は、飲み終えるとほどなくして【ラプワール】を出る。
だから常連客として何の違和感もなく、美寧との接点などは見えてこない。

けれど怜がその後、従業員口から出てくる美寧を待っていることを、颯介はこの時はまだ知らなかった。


「でも確かに、藤波先生は男の僕から見てもかっこいいもんね」

好きになる気持ちも分かる、と颯介が言う。
美寧はそれに頷きながらも、『見た目がかっこいいから』好きになったわけではない、とも思う。

包み込むような優しさ、静かな微笑み、時折見せる楽しそうな顔、困った時の微苦笑。
そして、彼の愛情そのもののような料理。

怜のどこが好きかなんて、もし訊かれたら困ってしまう。
挙げればキリがないほど、美寧は彼を作るひとつひとつのすべてがとても愛おしく大事なのだ。


「だけど……あのさ、」

何か言いづらそうに一旦言葉を切った颯介が、躊躇いがちに言葉を続けた。

「前も言ったと思うけど、藤波先生ってさ、すごいモテるんだ。……でも、どんな美人が声を掛けてもなびかないくらい、すごく大事にしてる相手がいるんだって………噂で聞いたんだ………」

颯介が言いにくそうにしながら言ったその言葉に、美寧は両目を見開いた。
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