耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

『すごく大事にしている相手』

自分の中で何度も反芻する。
少し時間がかかったけれど、それは美寧の胸の一番底にストンと納まった。

『大事な相手』———それは自分のことを指している。
疑いようなくそう思えるほどに、美寧は怜に大事にされていた。

美寧の顔がみるみる赤くなっていく。
怜がそんなふうに大学(しょくば)で自分のことを話してくれているのかと思ったら、口の端が勝手にゆるゆると持ち上がって喜びが顔に出てしまう。

ゆるんだ顔を隠そうと口元を両手で覆い、うつむいて「そうなの……?」と口にすると、颯介は「そうなんだ」と頷く。

熱くなった頬を両手で押さえた時、颯介が言った。

「だからさ、えっと……その、がっかりしなくても大丈夫だから」

「え?」

何をかっがりすると言うのだろうか———

美寧はきょとんとし、長い睫毛をパタパタと(しばた)かせた。

「だから、……えっと、……『初恋は実らない』っていうだろ?だから、藤波先生がダメでもがっかりしないで!美寧ちゃんには美寧ちゃんの相応しい(・・・・)相手がいるんだよ」

美寧は両目を大きく見開いた。

(初恋は……実らない………?)

怜は美寧が初めて好きになった人。

(れいちゃんがダメでも、私に相応しい(・・・・)相手がいる………?)

いったい怜以外の誰が自分に相応しい(・・・・)と言うのだろう。
たとえそんな相手がいたとしても、そんなものは欲しくない。

自分が好きなのは後にも先にも怜一人だけなのに———

< 128 / 427 >

この作品をシェア

pagetop