耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「颯介くん、テキパキしててお仕事がはやいし、お客さんともすぐ仲良くなっちゃうんだよ?いつもすごいなって思っちゃう」

「そうですか……」

「うん。私も負けずに頑張らなきゃ」

丸いトレーを胸の前で抱え笑顔で言う美寧。
怜は頷くでも答えるでもなく微苦笑を浮かべる。そんな怜の前に淹れたてのコーヒーを置きながらマスターが言った。

「お前もなかなか大変だな……」

なぜかしみじみと憐みのこもる声色に美寧が小首を傾げた時、入り口のカウベルがまたカランと鳴った。

「いらっしゃいま、—―—えっ!」

ドアの方を見て目を丸くした美寧。

入ってきたのは、ふんわりとしたシルエットのカシュクールワンピースに身を包んだ若い女性。
美寧よりも少し上くらいだろう彼女は、ぱっちりとした二重の瞳を見開いた。なめらかなウェーブを描くブラウンの髪が、肩の下でくるんと揺れる。

「あの時の!……なんでここに!?」
「あなたあの時の!……なんでここに!?」

二人同時にそう呟いた時、カウンターからマスターの声が聞こえた。

「ああ、(あん)。もう着いたのか」

「えっ、『杏』って!?」

目を丸くして振り返った美寧にマスターが言う。

「そう言えば美寧、今日からなんだ。しばらく娘が帰って来るのは」

「えっ、『美寧』って!?」

美寧のすぐ後ろから驚いた声が上がる。その声に振り向くと、入ってきた女性が目をまるくしている。

お互いに顔を見合わる女子二人を見比べて、マスターは「はははっ、息が合うな」と楽しげに笑った。


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