耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]


「なんだお前たち、会ったことがあったのか」

カウンターに並んで座る三人の顔をそれぞれ見比べながら、驚いた声でマスターが言った。
くっきりとした二重瞼の垂れ目が丸くなっている。

それに対して「うん、そうなの」と答えた杏奈は、美寧とカウンターの一番奥に座る怜に向かって言った。

「お名前もお伺いしていなかったことに後で気付いて、『あ~失敗した~』って思ってたんです。こうしてお会いできるなんて、本当に嬉しいです!あの時は本当にありがとうございました」

腰を下ろしていたカウンターのスツールから立ち上がって深々と頭を下げる杏奈に、美寧の方が慌ててしまう。

「このスツールは高さがありますから、うっかり引っかかったら危ないですよ」

怜の隣で、美寧は杏奈に向かって大きく頷く。

さっき隣に立った時、杏奈の目線は自分とほとんど変わらなかった。
百五十二センチしかない美寧にとって、カウンターのスツールは少し高い。腰を下ろすと足がつかず、いつもぷらぷらとぶら下がる足の所在なさが気になってしまう。

「ほら、杏。とりあえず座りなさい」

マスターに促され美寧と怜にもう一度頭を下げ、杏奈はまた腰を下ろした。

「で?———何がどうなってんだ?俺にも詳しく話してくれ」


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