耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
三つあるドアが全部見える場所に立って、開くドアをじっと見つめる。怜が出てきた時にすぐに気付けるように。

壁に背を向けて寄りかからずに立つ美寧は、廊下を通っていく学生たちがチラチラと向ける視線を感じていた。

(ここの学生じゃないって、バレバレなのかな……)

さっき怜に質問していた女子学生たちと自分とは、天と地ほども違うと思う。洗練された都会の学生たちに、美寧は少し気後れを感じてしまう。


けれど彼女が注目を浴びる理由はちゃんとある。本人はまったく気付いていないが。

背筋がシャンと伸びた美しい立ち姿。透き通るような白い肌。
着ているワンピースは体に沿ったものなのに、それでも体が泳ぐのが分かるほどの華奢なライン。
一度も染めたことのない(つや)やかな髪は、腰のあたりでふわふわと波打ち、ぱっちりとした丸い二重の瞳が、白く小さな顔の中でとても印象的だ。
やや伏せられた瞳を覆う睫毛は、余計な手を加えなくても影が出来るほどふさふさと長い。

一言で表すならば、『美少女』。
本人が思っているのとはまったく逆の意味で注目を集めているのだ。

何も言わず立っているだけでも、「守ってあげたい」という庇護欲を掻き立てる容姿を持っていることを、本人は全然理解していない。

通り過ぎて行く学生たちの視線や、こちらを見てこそこそと何か話す様子に居た堪れなさを感じていた時、ドアから神谷が出てきた。

「あっ!良かった、まだいた!」

小走りで美寧の前までやってきた彼は、ふぅっと肩を下げる。

「良かった。気付いたらいなくなってたから、もう帰っちゃったのかと思った」

「あっ、」

そう言われて初めて、彼にちゃんとお礼を言っていないことに気が付いた。

無事ここまで辿り着けただけでなく、講義をする怜を見ることまで出来た。それは全部目の前の彼のおかげだ。

「本当にありがとうございました」

言いながら深々と頭を下げると、「わっ、ちょっと」と焦ったような声が聞こえてきた。

「そんな頭なんて下げないで。大した事してない。たまたま目的地が一緒だったってだけ。早く頭上げて?なんか見られてるし………」

気まずそうにそう言われて、美寧は頭を上げた。確かに通り過ぎて行く人の視線を感じる。

「良かった……君みたいな子にそんな風に頭を下げられたら、逆に僕が悪いことしたみたいな気になってくる……」

どういうことだろう。意味が分からない美寧が小首を傾げると、神谷は頬を薄く染めた。

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