耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「あのさ……良かったら他のところも案内しようか?」

「え?」

「学部棟以外にもキャンパスの中、見学したいだろ?」

確かに大学構内をもっとちゃんと見てみたい。迷子になりかけたさっきは、そんな余裕はなかった。
怜の職場なのだから、怜が働く大学をもっと良く見てみたいと思った。

一瞬そんな思いが過って考え込んだ美寧に、神谷は畳みかけるように続ける。

「僕、今日は三限目休講なんだ。だから、これから一緒に昼メシ食べてからキャンパス案内するよ。うちのカフェテリア、結構美味しんだって、女子からも人気なんだ」

「えっと、あのお昼は……」

怜と食べようと思って持ってきたのだ。大学案内はとても魅力的なお誘いだけど、本来の目的を忘れてはいけないと、美寧は両手で帆布バッグの紐をギュッと握った。

折角のお誘いを断らなければならない申し訳なさに美寧が眉を下げると、神谷が訊いてきた。

「もうお昼食べた後だった?」

「いえ、そうではなくて、お弁当を……」

「なるほど、お弁当持って来てたんだ。でも大丈夫だよ。学食で持参した弁当食ってるやついっぱいいるし。そこで食べたらいいと思う。あ、もしカフェテリアのメニューを食べてみたくなったら、僕が代わりにお弁当を食べてもいいよ」

早口で言われて、美寧が口を挟む隙間が無い。

「カフェテリアのコーヒーも結構本格的で美味しいんだ。僕コーヒーが好きで、」

言いながら歩き出した神谷。美寧がついて来ると信じて疑わないのか、前を向いたまま話している。

「あ、あの、」

美寧の声に一旦足を止めた彼が、振り向いて言った。

「とりあえず行こう。早くしないと席が埋まっちゃうよ?詳しい話はまたそこでしようか」

どうしたらいいんだろうか。
とりあえず追いかけながら事情を説明しようか。けれど、この場を離れたら怜が出てきた時に分からない。

親切な神谷の申し出を素気無く断るのも気が引けるし、さっきのお礼にコーヒーの一杯でもご馳走した方がいいのかもしれない。だとしても、せっかく会えたのだから、せめてデザートは怜と一緒に食べたい。

(れいちゃんには、メッセージを入れておけば大丈夫かな……)

数秒間の内に頭の中で色々な考えがぐるぐると渦巻いたけれど、結局そう結論付けた。

< 15 / 427 >

この作品をシェア

pagetop