耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
両手に持っている帆布バッグを左肩に掛け、数歩先に行く神谷の背中を見る。

「待って神谷さん、」

神谷の背中を追う為、美寧が足を踏み出した時―――

「ミネ―――」

背中から聞こえた声に、振り返った。


「れいちゃんっ」

驚いた美寧は、思わず声を上げた。
怜はスラリと長い脚を動かして、美寧の所へ向かってくる。

「どうしたのですか、何かありましたか?」

少し焦った様子の怜。それはそうだろう。美寧は大学に来るとは一言も言っていない。
さっき迷子になりそうだった時に送ったメッセージは、講義中だった為にまだ見ていないのだろう。美寧に何か困ったことが起きたのかと、怜が心配するのも(うなず)ける。

「えっと……あのね、」

怜の誤解を早く解かなければ、と美寧が話しかけた時。

「早く行かないとカフェテリアの席が埋まっちゃうよ―――って、あれ?藤波先生」

美寧がついてきていないことに気付いた神谷が、戻ってきたのだ。
美寧は考えた。せっかく怜と合流できたのだ。神谷の申し出は断って、このまま怜とお弁当を食べよう、と。

「神谷さん、実は私、」

「あ、ひょっとして藤波先生に何か質問があったの?それなら終わるまで待ってるから、心配しなくていいよ」

「――質問ですか?」

「藤波先生。この子、僕が連れて来たんです。オープンキャンパスで、迷子になっていたみたいで」

「迷子に?」

「はい。うちの大学広すぎですよね」

「そうですか……」

神谷とやり取りしていた怜が、美寧に視線を振った。何か言いたげ瞳で、美寧をじっと見つめる。

「えっと、あのね、」

ちゃんとここまでの経緯を説明しようと考えるが、またしても美寧に言葉を神谷が遮った。

「彼女さっき、先生の講義を見学していたので、何か訊いてみたいことがあるのかもしれません。―――終わるまで待ってるよ」

最後の言葉は美寧に向けてのものだ。

「―――で?」

美寧を見つめたまま怜がスッと目を細める。どことなく怜が纏う空気が二度くらい下がった気がして、美寧はたじろいだ。
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