耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
続行することに決まった“恋人練習”。あれから三日経ち、少しずつ美寧はそれに慣れてきた。

怜はまた、以前と同じ“特別なキス”をくれるようになった。
けれどそれまでとは、少し違っていて———。

怜はキスをしながら、これまでだと美寧の背中を抱きしめるだけだった手で、美寧の体を服の上から優しく撫でてくる。
背中、肩、腕、首、腰———色々な場所を、これまでより少し甘やかに。

怜の大きな手に優しく撫でられるのがなぜかとても心地好くて、ごろごろと猫のように喉を鳴らして「もっと」と強請(ねだ)りたくなる。
キスの感触と合わさって頭の中がふわふわとして、キスが終わった時には、大抵ほわん(・・・)と夢見心地になっている。

なので、今も怜の手の甲が頬を擦るのを感じたが、美寧はそのまま大人しく瞳を閉じていた。

舌を絡め合い”特別なキス”をする。
鼻で呼吸をすることにも大分慣れてきた。これも“練習”の成果かもしれない。

しばらくしたら絡められていた舌が(ほど)かれ咥内から出ていく。それでも名残を惜しむように唇を数回啄まれながら、頬を包んでいる手の指先が耳の裏側をくすぐった。

「ぅみゃっ、」

声が飛び出ると同時に肩を竦ませる。美寧の声に驚いたのか、怜が離れていく。

「くすぐったかったですか?」

黙って頷くと、怜は少しだけじっと美寧を見つめた後、おもむろに美寧の耳をペロリと舐めた。

「~~~っ!!」

声にならない叫びが飛び出した。

そんなところ誰にも舐められたことなんてない。みるみる体が熱くなっていく。
反射的に耳をかばおうと手を持って行こうとしたが、その手を怜の手が掴んだ。
指を絡ませて布団に縫い留められる。
次の瞬間、耳介(じかい)(耳殻)が温かく湿った感触で覆われた。

口から声が飛び出した。なんと言ったのか自分でも分からない。ただ細く高い音としてしか認識できない。

上下の唇で食み、舌で耳のくぼみをたどり、時折歯でかじる。口全部を使って、怜は美寧の耳の感触を確かめているようだ。

美寧は、幼い頃に祖父に買ってもらった棒付きの大きな飴は、きっとこんなふうに感じながら自分に食べられていたのかもしれない。

水音が鼓膜に直接響く。

ぎゅうっと固く目をつぶって痺れるような感覚にひたすら耐える。口元を強く引き結んでいなければ、またさっきみたいな意味不明な言葉が飛び出しそうだった。
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