耽溺愛２－クールな准教授と暮らしていますー

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怜が向かったのは、【CCO】———Co-Creating Organization。【共創機構】とも呼ばれる、企業と研究室を繋ぐ大学の専門機関だ。

企業をはじめとする産業界からの多種多様な要請は【CCO】を通して各研究室へと伝えられる。逆に研究室から企業へのアプローチも【CCO】を通すことがほどんどだ。
そうすることで大学職員や学生から彼らの本分である研究以外の雑事を一手に引き受けつつ、企業の『需要(ニーズ)』と大学の『素材(シーズ)』をマッチングさせる役割を担っているのだ。


【CCO】の担当職員と面会した怜は、ますます首を捻ることになる。

『月松酒造の担当者によると、「新酵母開発の必要性が無くなった」とのことです』

そう担当職員は言った。


それからすぐ、怜は月松酒造への詳細説明を【CCO】に依頼し、自分は研究の速度を速めた。

酵母は発酵過程で独特の香りを生成する。月松酒造から要請を受けていたのは、その香りを失うことなく体内で機能できる酵母。成功すれば清酒の『特定保健用食品』開発の足掛かりになるはずだ。

一定の結果が出せれば、月松酒造側の考えも代わるかもしれない。
もしそれが叶わない時には、次の研究受託先を募る必要がある。そうなれば研究成果は高い方が良い。研究継続の為には、今年度中には次の提携企業を確保しなければならないだろう。

怜は企業からの回答を待つ間に、提示し得る限りの材料を集めることにした。


月、火とも竹下を始めとする研修室メンバーと夜遅くまで実験室に籠っていた。けれど前日までの解析データになるべく早く目を通す必要がある。その為、怜は今日も早く出てきたというわけだ。

水曜日は一限目に講義は入っていない。
怜は実験室を竹下に任せ、もう一度【CCO】へと足を運んだ。