耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
神谷の台詞に、彼が『“怜が付き合っている女性”が美寧と別人物だ』と勘違いしていることに気付く。

『ちょっかい』とは、以前彼が美寧を送ってきた時に、自分が美寧を家に招き入れたことだろうか。だとしたら、彼は自分たちが一緒に暮らしていることも恋人同士だということも知らないことになる。

(ミネは俺とのことを彼に言ってないのか……)

自分との関係を美寧は彼に知られたくないのだろうか。そんな疑問が頭に過る。

自分は彼女を目にする男性すべてに『彼女は自分の恋人だ』と言ってやりたいのに———

思わず溜め息がこぼれた。
怜のその様子に颯介は何を思ったのか、「純粋な彼女を(もてあそ)ぶのはやめてください」と噛みつくように言う。

「弄ぶ?……そんなことはしていません」

「なっ、でもそれなら、」

「むしろ、振り回されているのは俺の方だな」

「え……?」

独り言ちた怜の声が聞き取れなかった神谷が、一瞬非難の声を止める。

そんな神谷に、怜は冷たく言い放った。

「俺が彼女をどう思っているかを、君に教える義理はありません」

そう一言だけ言って、これ以上付き合えないと足を一歩踏み出した時

「僕の方が先だったらっ……!」

張り上げられた声に足を止める。
すると怜を睨みつけながら神谷が言った。

「先に出逢ったのが僕だったらきっとっ……」

「順番がそんなに重要ですか?」

きっといつどんなタイミングで出逢っても、自分は美寧のことを好きになっていた。

そう言い切れる。

怜の強いまなざしに神谷は一瞬たじろいだ。けれど、ぐっとこぶしを握って口を開く。

「本当だったら僕の方が先に彼女に会うはずだったんだ……そしたら彼女は今頃……」

「それはどういう、」

意味深な神谷の言葉の意味を訊こうとした時、二人の間に講義開始のチャイムが響き渡った。





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