耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
美寧は、学校の保健の授業で『結婚後の家族計画』について習っていた。
“避妊”には何通りかの方法があって、婦人科に行けば薬を処方してもらえることも知っている。手近なところではドラッグストアーやスーパーなどで “避妊具”を購入できることも。

頷いた美寧に少しホッと表情を緩めた杏奈。けれどすぐにまた、表情を真顔に戻した。

「もちろん恋人同士だからと言って“絶対”行為に及ぶというわけではありません」

「……そうなんですか?」

「はい。それは基本的にお互いの合意が有ってこそです。ですから、どちらかが一方的に無理やり、ということがあれば、そのお相手との関係は継続しない方がいいかもしれません」

「そんなっ……れいちゃんは、無理やりなんて………絶対しない」

美寧を『怖がらせたくない、泣かせたくない』と言った時の怜の苦しげな表情を思い出す。
まるで自分よりも彼の方が何かを怖がっているようだった。

「良かった………」

は~っと大きな息をついた後、杏奈は気が抜けたようにそう言った。

「これはあくまでただの“知識”だよ?あとは美寧ちゃんが相手の方とどうしたいか。恋人同士のことは本人たちの問題だもん。世間とか普通とかじゃなくて、二人の間だけのこと。だから、これからどうするかは二人で話し合ったら良いと思うの」

美寧は頷いた。

すると突然、杏奈が「うわ~~んっ」と情けない悲鳴のような声を上げた。

「杏ちゃん……?」

「あ~っ、やだぁ~~っ、私ってば、こんな可愛い子にいったい何を力説してるの!?」

両手で顔を覆って悶絶している。

「しかも、こんな真昼間の明るい公園でっ!……は、恥ずかしすぎるっ……」

彼女の、両手に収まり切れない頬や首、耳が真っ赤になっている。

「ごめんなさい……私が変なこと聞いちゃったから……」

そう美寧が言うと、杏奈は慌てて顔を上げた。

「やだっ、ちがうよ!?私が『なんでも話して!』って言ったんだもん。お姉ちゃんだと思って、とか言ったくせに……実は私もその手の経験はほとんどなくって……」

「え?」

「付き合ったのも、そ、…そう言う関係になったもの、今の夫が初めてだったし……」

「そうだったんですか?」

「うん……」

意外な告白に美寧は目を(しばが)かせる。
さっきまであんなに坦々と自分に“男女交際”のアレコレを語ってくれた彼女が、《《そう》》だとは思わなかった。
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