耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「だからね?美寧ちゃんも藤波さんと一緒に、いろんな”初めて”を積み重ねていけばいいんじゃないかな。彼ならきっと美寧ちゃんのことを一番に考えてくれると思うよ?」

「………はい」

しっかりと頷いた美寧を見て、杏奈はホッと肩を撫でおろした。

「私……、少しはお姉ちゃんらしく、美寧ちゃんのお役に立てたかな……?」

「はいっ!」

「良かったっ!」

心底ほっとした様子でそう言った杏奈の肩の下で、焦げ茶色の髪がくるんと揺れる。

(アンジュさんの毛とそっくり……)

美寧は隣に座る杏奈を見ながらそんなことを思っていた。


「あ、そうだ、ヒロ君と言えば!」

突然思い出したように杏奈が言った。

「美寧ちゃんは今度の土曜日って何かご予定あるかな?」

「今度の土曜日……?」

「うん」

美寧は自分の予定を思い出す。
確か次の土曜日は祝日でアルバイトは休み。ラプワールは水曜日の店休日以外は祝日が休みとなっている。今のところ特に予定は入れていない。

「特に何もありません」

そうう答えると、杏奈が目を輝かせた。

「本当!?実はその日ね、ヒロ君の誕生日なの!」

「え、マスターのお誕生日!?」

「そうなの。ヒロ君の誕生日は毎年祝日でお店が休みなの。だから店でヒロ君の誕生日会をすることになってるんだ。ちょうど夫も出張から帰って来るし」

「わ~っ、素敵ですね」

「もしよかったら美寧ちゃんも参加してくれないかな?」

「いいんですか?せっかくの家族水入らずなのに……」

他人の自分が割り込むなんて申し訳ない。そんな気持ちから二つ返事を返せない。
けれど、杏奈は大きく頭を左右にふって言った。

「美寧ちゃんはもう我が家の家族みたいなもんだよ?来てくれた方が絶対ヒロ君も喜ぶから!」

笑顔で言われ、美寧はおずおずと頷いた。

「藤波さんにも、もしよかったらご一緒にどうぞ、って伝えてもらえるかな?」

「れいちゃんも……」

「うん!是非!」

「れいちゃんに伝えます。杏ちゃん、ありがとう!」

美寧の笑顔に、杏奈も「楽しみだね」と笑顔になった。

微笑み合う二人の頭の上では、澄んだ青空にぽっかりと浮かぶ雲が、ゆっくりと流れていた。



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