耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[1]


美寧の意識が、眠りから少し浮び上がる。

心なしかいつもよりも布団が温かい。ほのかにいい匂いもする。
心地良いものに体を包まれて、意識がまた眠りに沈もうとしてしまう。

最近はずいぶん朝が冷えるようになった。布団の温もりが名残惜しくて中々抜け出せず、二度寝をして寝坊をしてしまったこともある。

(またお寝坊する前に、今日はちゃんと起きないと……)

このところ怜は仕事で忙しそうだ。昨日は早く出たのに帰って来るもの遅かった。
少しでも忙しい彼の助けになりたい。だから寝坊するわけにはいかないのだ。


(そう言えば、昨夜れいちゃんはいつ帰ってきたのかな……)

いやその前に、自分は一体いつ布団に入ったのだろう———

ふとそう疑問が頭を過りつつ、重たい瞼をなんとか持ち上げた瞬間、

「っ、」

すぐ目の前にある顔。
思わず声を上げそうになったが、すんでのところで飲みこんだ。

一気に見開いた色素の薄い茶色い瞳には、瞼を閉じて静かに眠る怜の顔が映っていた。

(———なっ、なんで!?)

軽くパニックになりかける。口から飛び出しかけた声をすんでのところで飲み込んだ。

ここでもし声を上げたら、怜が起きてしまうかもしれない。
仕事で疲れているだろう彼を、ぎりぎりまで寝かせてあげたい。
なんとか動揺を鎮めようと、美寧は音を立てないよう注意を払いつつ、深呼吸をした。

深呼吸を何度かくり返したところでやっと少し落ち着いた美寧は、今の自分の状況を静かに探ってみた。

首の下には怜の腕。彼のもう片腕は美寧の体の上にあり腰に回されている。

布団の中、美寧は怜に抱きしめられていた。

布団の中がいつもよりも何倍も温かかったのは、怜の体温のおかげだった。美寧は低血圧で冷え性の為ここまで温かくはならない。これでも、怜の作る料理のおかげでずいぶん改善したのだけど———


今度は目だけを動かして辺りを見回してみた。身じろぎで怜を起こさないよう注意を払いながら。

天井まで届く本棚、丸いシーリングライト。

見えるものはそれくらいだったが、美寧はそこがどこだかすぐに分かった。

(れいちゃんの部屋だぁ……)

どうやら自分は今、怜のベッドにいるらしい。
状況が分かった美寧に少しの余裕が出来る。美寧は目の前で眠る彼をまじまじと見つめた。
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