耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
ひとしきり家族のやりとりが終わった頃を見計らって、美寧もマスターへ近寄る。

「マスター、お誕生日おめでとうございます」

「今日は来てくれてありがとうな、美寧」

「私こそ、お招きありがとうございます。……これ、大したものじゃないのですが、良かったら……」

二人に続いて美寧も用意した包みを差し出す。

「わざわざ用意してくれたのか?……開けてもいいかな?」

「……はい」

はにかんだ美寧が頷くと、マスターが包みを開けた。

「おおっ、これ……!」

垂れ気味の二重を丸く見開いたマスターの後ろから、宮野家一家が手元を覗き込む。

「わぁ~!ラプワールだ!」
「すごい!そっくり」
「素敵ね」

彼らが口々に褒めたのは、色紙に描かれたラプワールの外観。
色紙の縁には季節の樹木や草花がぐるりとラプワールを囲むように描かれている。

「すごいな……美寧は絵を描くのが上手いんだな」

「本当。素敵な絵だわ」

「お店もそっくりだけど、周りのお花もどんぐりもすごく可愛い!」

「見ていると優しい気持ちになるね」

四人から言われ、美寧は照れ臭そうに「えへへ」とはにかむ。

「気に入っていただけて良かったです」

「ありがとう、美寧。店に飾らせてもっていいか?」

「はい!ありがとうございます」


それからみんなで和気あいあいと料理やケーキを食べた。

杏奈が焼いたマスター直伝だというグラタン。奥さんが作ったいなり寿し。マスターが作ったサンドイッチ。
クラッカーの上にクリームチーズやサーモンが乗ったカナッペは、杏奈の夫の修平が準備したらしい。

他にも沢山並んだ様々な料理を楽しみながら、美寧は仲の良い家族の一員になれたような気持ちを味わっていた。

途中、ラプワールのドアベルは途中で一度だけ軽く音を立てたが、それからは静かなものだ。表には【Closed―準備中―】の札が掛けられている。

しかし、皆のお腹が程よく満たされたころ、そのドアベルが大きな音を立てて鳴った。
ドアの上でカランとカウベルがなった後、賑やかな声を上げながら入ってきたのは―――
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