耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「なにがいいかなぁ……」
「やっぱりお台所で使えるものかなぁ」
「でも、お仕事に持っていけるものもいいなぁ」

次々と独り言を口にする美寧を、怜はじっと見下ろす。

「お誕生日のケーキも作ってみたいなぁ…あっ、今日のマスターのお誕生日ケーキ、すごく美味しかったんだよ?杏ちゃんが奥さんと一緒に作ったんだって。れいちゃんが来た時にはもうなくなっちゃってたもんね……そうそう!杏ちゃんと旦那さんからマスターへのプレゼントはね、」

「———ミネ」

「トースターだったの!お店で使ってるのが古くなってるからって、最新で人気のやつを、」

「ミネ———」

「……ん?」

呼びかけに気付いた美寧が怜を見る。

「マスターへのプレゼントの話は帰り道にも聞きましたよ」

「あっ!……そうだった………」

気まずそうに視線をさ迷わせた美寧は、「ごめんね」と眉を下げる。

「いいえ、それは良いのです」

ラプワールからの帰り道、今みたいに美寧は色々な話をした。

怜が来るまでのマスターの誕生日会がどんな風だったのか。
誰がどんなプレゼントを渡して、どんな会話をしたか。代わる代わる顔を出した常連客が、どんな祝いの言葉や品を置いて行ったか。

途切れることのない美寧の報告話に、怜は丁寧な相槌を返しながらも彼女の様子をじっと伺っていたのだ。

家に帰って来てからも彼女の機嫌はとても良さそうに見えていた。
が———

「ミネ———」

「なに、れいちゃん?」

口の端を上げ、首を傾げながら自分を見上げる美寧に、怜は静かに言った。

「無理に笑わなくても大丈夫です」

「え、」

「気持ちが落ち込んだ時には、無理に笑わなくて良いのですよ」

「っ、」

美寧は、上がっていた口元をふにゃりと歪めた。けれどすぐに、何かに耐えるようにきつく唇を引き結ぶ。

「つらい時は甘えていいのですよ」

大きな瞳にみるみる雫が集まり始める。
怜はゆっくりと微笑むと、隣に座る彼女に向かって両手を広げた。

「おいで———美寧」
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