耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「前にここに来た時に君を見て、どこかで会ったような気がしていたんだ。その時はどこで会ったのか思い出せなかったが———CMOが昔見せてくれた写真だった」
「ナギさん……今は『CMO』は止めてください」
隣から聡臣が眉を下げ、困った顔で高柳を見る。
「今は仕事ではなく完全にプライベートです。僕が大学時代に見せた妹の写真のことを先輩が憶えていてくれたから、こうして美寧に会えたんですよ?」
高柳と聡臣は、大学の研究室の先輩と後輩だったという。聡臣が研究室に入ってきた時、院生だった高柳が面倒を見、息が合ったのか時々プライベートで食事に行ったりする仲になった。
高柳が就職した後も、たまに近況を連絡し合ったりする付き合いを続け、聡臣が【Tohmaグループホールディングス】に入社した後は、仕事終わりに飲みに行くような友人関係になっていた。
【Tohmaグループホールディングス株式会社】
それはビールを主力としたアルコール飲料を製造販売する【株式会社トーマビール】を中心とし、飲料や栄養食品など幅広いジャンルの子会社を抱えたグループ全体の母体となる企業。いわば、大企業の元締め。
聡臣の父親は、そのトップである当麻代表取締役社長兼CEO。つまるところ、彼は御曹司でありTohmaの後継者なのだ。
そんな聡臣が欧州から戻ってきてすぐに就いた役職は、【CMO】——Chief Marketing Officer・最高マーケティング責任者。
彼は、グループ全体のマーケティングを企画している高柳の上司となったのだ。
けれど今、聡臣が高柳に向ける顔は気安い。
“先輩と後輩”、“御曹司と社員”、“上司と部下”———様々な垣根を超えた友人関係が、二人の雰囲気から感じられた。
「僕が大学に入学した年に美寧と一緒に取った写真を、ナギさんに見せたことがあったんだ……」
「写真に写るオミの妹の顔をはっきりと覚えていた分けではなかったが、なんとなく面影が重なって……」
『面影』と高柳は控えめに言ってくれたが、自分が中学生の時からあまり変わっていないという自覚がある。そのせいでいつも幼く見られてしまうのだ。
「でもそれだけじゃない……ナギさんは多分何度か美寧のことを見たことがあったようで、」
「え?」
「実はナギさんはうちと縁戚関係があって———」
「えっ!」
今までよりひと際大きな声を上げた美寧に、高柳が小さく頷く。
親戚関係にあるなら会ったことがあってもおかしくない。けれど、美寧にはいつどこで高柳に会ったのか、まったく記憶がなかった。
「ナギさん……今は『CMO』は止めてください」
隣から聡臣が眉を下げ、困った顔で高柳を見る。
「今は仕事ではなく完全にプライベートです。僕が大学時代に見せた妹の写真のことを先輩が憶えていてくれたから、こうして美寧に会えたんですよ?」
高柳と聡臣は、大学の研究室の先輩と後輩だったという。聡臣が研究室に入ってきた時、院生だった高柳が面倒を見、息が合ったのか時々プライベートで食事に行ったりする仲になった。
高柳が就職した後も、たまに近況を連絡し合ったりする付き合いを続け、聡臣が【Tohmaグループホールディングス】に入社した後は、仕事終わりに飲みに行くような友人関係になっていた。
【Tohmaグループホールディングス株式会社】
それはビールを主力としたアルコール飲料を製造販売する【株式会社トーマビール】を中心とし、飲料や栄養食品など幅広いジャンルの子会社を抱えたグループ全体の母体となる企業。いわば、大企業の元締め。
聡臣の父親は、そのトップである当麻代表取締役社長兼CEO。つまるところ、彼は御曹司でありTohmaの後継者なのだ。
そんな聡臣が欧州から戻ってきてすぐに就いた役職は、【CMO】——Chief Marketing Officer・最高マーケティング責任者。
彼は、グループ全体のマーケティングを企画している高柳の上司となったのだ。
けれど今、聡臣が高柳に向ける顔は気安い。
“先輩と後輩”、“御曹司と社員”、“上司と部下”———様々な垣根を超えた友人関係が、二人の雰囲気から感じられた。
「僕が大学に入学した年に美寧と一緒に取った写真を、ナギさんに見せたことがあったんだ……」
「写真に写るオミの妹の顔をはっきりと覚えていた分けではなかったが、なんとなく面影が重なって……」
『面影』と高柳は控えめに言ってくれたが、自分が中学生の時からあまり変わっていないという自覚がある。そのせいでいつも幼く見られてしまうのだ。
「でもそれだけじゃない……ナギさんは多分何度か美寧のことを見たことがあったようで、」
「え?」
「実はナギさんはうちと縁戚関係があって———」
「えっ!」
今までよりひと際大きな声を上げた美寧に、高柳が小さく頷く。
親戚関係にあるなら会ったことがあってもおかしくない。けれど、美寧にはいつどこで高柳に会ったのか、まったく記憶がなかった。