耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「正しくは縁戚関係にあるのは俺じゃない———」
「どういうこと、なの……?」
ますます困惑する美寧。
すると、それまで三人のやり取りを黙って聞いていた涼香が口を開いた。
「大学の時、お母さまが再婚されたって聞いたけど……もしかして、」
「ああ———」
「ああ、なるほど……それで」
怜も何か思い当たることがあるようで、頷いている。
自分以外の全員には分かることが自分には分からず、美寧の眉間に皺が寄る。
「……どういうことなんですか?」
「母が再婚した相手は、長嶺さん——【Tohma】の常務だ」
「えっ!!」
「俺は成人していたから、長嶺の籍には入らなかった。だが、義父とも義妹とも家族の付き合いはしている」
「知りませんでした……そうだったのですね……長嶺のおじさまの……」
父の従弟である長嶺章吾(ながみね しょうご)は、彼の娘が幼い時に妻を亡くしている。自分の父と似たような境遇の彼もまた、長い間一人で愛娘を育てていた。
父親と別々に暮らしていた美寧の耳に、遠縁の再婚話は届かない。もし届いていたとしても、覚えていないだろう。長嶺が再婚した時、美寧はまだ十歳にも満たなかったのだ。
毎年正月には祖父の家から自宅に戻り、挨拶に訪れる親戚や会社の役員たちと顔を合わせることもあったが、父の後継者の兄とは違い、美寧が表に立つことはほとんどなかった。
会社の将来にかかわることのない娘は、社交の場に呼ばれることもない。だから父にとって自分は居ても居なくても同じなのだ。
成長するにつれ、美寧はそれを自分で理解した。
年に一度会うかどうかの遠縁の顔は完全にうろ覚え。だから遠縁の義理の息子の顔まで覚えているわけはない。
美寧は改めて高柳と藤波家で初めて会った時のことを思い出した。
あの時自分は、父が寄越した迎えが来たのかと身構えた。どこかで会ったような気がしたからだ。
今思えばどこかですれ違ったのかもしれない。彼はTohma社員であり、常務の義理の息子でもあるのだから―――
「どういうこと、なの……?」
ますます困惑する美寧。
すると、それまで三人のやり取りを黙って聞いていた涼香が口を開いた。
「大学の時、お母さまが再婚されたって聞いたけど……もしかして、」
「ああ———」
「ああ、なるほど……それで」
怜も何か思い当たることがあるようで、頷いている。
自分以外の全員には分かることが自分には分からず、美寧の眉間に皺が寄る。
「……どういうことなんですか?」
「母が再婚した相手は、長嶺さん——【Tohma】の常務だ」
「えっ!!」
「俺は成人していたから、長嶺の籍には入らなかった。だが、義父とも義妹とも家族の付き合いはしている」
「知りませんでした……そうだったのですね……長嶺のおじさまの……」
父の従弟である長嶺章吾(ながみね しょうご)は、彼の娘が幼い時に妻を亡くしている。自分の父と似たような境遇の彼もまた、長い間一人で愛娘を育てていた。
父親と別々に暮らしていた美寧の耳に、遠縁の再婚話は届かない。もし届いていたとしても、覚えていないだろう。長嶺が再婚した時、美寧はまだ十歳にも満たなかったのだ。
毎年正月には祖父の家から自宅に戻り、挨拶に訪れる親戚や会社の役員たちと顔を合わせることもあったが、父の後継者の兄とは違い、美寧が表に立つことはほとんどなかった。
会社の将来にかかわることのない娘は、社交の場に呼ばれることもない。だから父にとって自分は居ても居なくても同じなのだ。
成長するにつれ、美寧はそれを自分で理解した。
年に一度会うかどうかの遠縁の顔は完全にうろ覚え。だから遠縁の義理の息子の顔まで覚えているわけはない。
美寧は改めて高柳と藤波家で初めて会った時のことを思い出した。
あの時自分は、父が寄越した迎えが来たのかと身構えた。どこかで会ったような気がしたからだ。
今思えばどこかですれ違ったのかもしれない。彼はTohma社員であり、常務の義理の息子でもあるのだから―――