耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

コンロの上の鍋を火にかける。焦がさないよう極弱めに。

鍋の中に入っているのは、かぼちゃのクリームシチュー。怜が作っておいてくれたものだ。

優しい味と栄養バランスの取れたシチューは、体も温まって寒い夜にピッタリ。
豆乳で作られているそのシチューには、かぼちゃの他にも、しめじやブロッコリーといった野菜がごろごろと入っている。さらに鶏肉も入っていて、これ一品でも十分食べごたえがある。

忙しい日々の中でも、怜が美寧のことを想ってくれているのが、十分過ぎるほど伝わってくる。


美寧は鍋の中を時々かき混ぜながら、「ふぅっ」と小さな溜め息をこぼした。

(シチューあんまり減ってなくて、せっかく作ってくれたのに申し訳ないなぁ………)

実は、美寧。今日の夕飯があまり入らなかったのだ。

怜の作ったシチューに苦手なものが入っていたわけではない。いつもと変わらず美味しかった。
けれど、いつもあんなに美味しいと思う料理が、ここ最近はあまり喉を通って行かない。食べる前から胸の奥に何かが詰まっているような感じがして、量が入らない。

バケット二切れは手つかずのままだし、自分で作ったサラダも。

忙しい怜にばかり任せきりではいけないと、レタスをちぎってミニトマトを盛り付けるだけの簡単なサラダを作った。怜に少しでも栄養を取って欲しかったのもある。
食べられなかった分は明日の朝ごはんの時にちゃんと食べようと、ラップをかけて冷蔵庫に片づけた。


この二週間ほど、夕飯だけでなく夜のティタイムも一緒に取ることが出来ていない。

美寧は一人の時間が長くなればなるほど、胸の隙間に何か黒く濁ったものがひたひたと沁み込んでくるような気がして、それを振り切るように、家の中でもあれこれとやることを探してしまう。

家事然り、スケッチ然り、新しく始めたこと然り。

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