耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
マスターの誕生日に颯介と押し問答のようなやりとりをしてから、彼とちゃんと話せていない。
美寧と颯介のアルバイトは、平日は入れ替わりになるよう組まれている。
土曜日は昼から二時間ほどは一緒に働くが、仕事中は込み入った話をする余裕はない。
けれど、それだけではない。颯介から避けられているようにも感じていた。
言葉を交わすのは、挨拶や仕事上必要なものだけ。しかも、それとなく目を逸らされる。
そんな彼に、美寧の方もなんと声を掛けていいのか、分からなくなってきていた。
美寧は内心、颯介があの時何を言いたかったのか気になっている。そして、彼ともう一度ちゃんと話をしなければ、とも思っている。
人当たりが良くて親切な彼が、あんなふうに怒った顔をするなんて、もしかしたら自分で気付かないうちに彼を傷つけるようなことを言ってしまったのかもしれない。そうだとしたら、きちんと彼に謝りたい。
美寧はひそかに、颯介と話をする機会を伺っていた。
けれどちょうど日曜日のお昼前ということもあって、ラプワールはそれなりに客足があり、マスターも颯介も美寧にばかりかまってはいられない。
美寧の方も、せっかくの貴重な夫婦の時間にお邪魔をしている自覚があったので、航との編み物講習に意識を集中した。
編み棒と毛糸の持ち方、一段目の作り目のやり方、そして実際にどう編むか。
一つ一つを丁寧に教えてくれた航のおかげで、ラプワールを出る頃には何とか自力で編めるようになっていた。
ラプワールを出る時に、美寧が『教えて頂いたお礼に』と三人分の会計をしようとすると、二人とも口をそろえて『自分が出す!』と言う。
美寧が『どうしても二人にお礼をしたいから』と強く言い、それでも首を縦に振らない二人に、とうとう美寧は『マスター、アルバイト代から引いておいてください』と言って、強引に二人を店から連れ出した。
そんな美寧に、二人は少し困ったような表情を浮かべながらも、『ありがとう。ごちそうさま』と言ってくれた。
美寧が、三人分のコーヒーがマスターのおごりになっていたことに気付いたのは、翌月のアルバイト代の明細を見た後だった。
美寧と颯介のアルバイトは、平日は入れ替わりになるよう組まれている。
土曜日は昼から二時間ほどは一緒に働くが、仕事中は込み入った話をする余裕はない。
けれど、それだけではない。颯介から避けられているようにも感じていた。
言葉を交わすのは、挨拶や仕事上必要なものだけ。しかも、それとなく目を逸らされる。
そんな彼に、美寧の方もなんと声を掛けていいのか、分からなくなってきていた。
美寧は内心、颯介があの時何を言いたかったのか気になっている。そして、彼ともう一度ちゃんと話をしなければ、とも思っている。
人当たりが良くて親切な彼が、あんなふうに怒った顔をするなんて、もしかしたら自分で気付かないうちに彼を傷つけるようなことを言ってしまったのかもしれない。そうだとしたら、きちんと彼に謝りたい。
美寧はひそかに、颯介と話をする機会を伺っていた。
けれどちょうど日曜日のお昼前ということもあって、ラプワールはそれなりに客足があり、マスターも颯介も美寧にばかりかまってはいられない。
美寧の方も、せっかくの貴重な夫婦の時間にお邪魔をしている自覚があったので、航との編み物講習に意識を集中した。
編み棒と毛糸の持ち方、一段目の作り目のやり方、そして実際にどう編むか。
一つ一つを丁寧に教えてくれた航のおかげで、ラプワールを出る頃には何とか自力で編めるようになっていた。
ラプワールを出る時に、美寧が『教えて頂いたお礼に』と三人分の会計をしようとすると、二人とも口をそろえて『自分が出す!』と言う。
美寧が『どうしても二人にお礼をしたいから』と強く言い、それでも首を縦に振らない二人に、とうとう美寧は『マスター、アルバイト代から引いておいてください』と言って、強引に二人を店から連れ出した。
そんな美寧に、二人は少し困ったような表情を浮かべながらも、『ありがとう。ごちそうさま』と言ってくれた。
美寧が、三人分のコーヒーがマスターのおごりになっていたことに気付いたのは、翌月のアルバイト代の明細を見た後だった。