耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
怜の唇が離れていくと同時に、美寧は下ろしていた瞼を持ち上げる。
「れいちゃん、先にお風呂に入ってきてね?私、その間にご飯の準備をしておくから」
「しっかり温まってきてね」と念を押すように言うと、怜は微笑みながら「分かりました」と頷いた。
***
「ここのところ、あなたに任せてばかりですみません」
美寧の髪にブラシを通しながら、怜が言った。
遅めの夕食を取る怜の向かいに座って、ハーブティを飲みながらここ数日の出来事を聞いて貰ったあとだった。『最近あなたの髪を乾かせていませんね』と怜が呟いたのは。
『自分でなんとか出来るから心配しないで』と美寧が言うと、『それもそれで残念な気がします』と返ってくる。
実は、『なんとか出来るようになった』と言ったが、怜に余計な手間を取らせたくなくてそう言っただけ。本当は毎晩ドライヤーに四苦八苦しているのだ。
濡れたままにしていると風邪を引いてしまいそうだから、自分で乾かすようにはしているが、表面は乾いているのに中までちゃんと乾かすことができない。
大抵途中で諦めてしまうので中が生乾きのままになってしまう。そうすると翌朝は、いつも以上に広がってしまうのだ。癖のあるネコ毛はすぐに絡まるし、美寧には扱いづらい。
それでも朝は怜が髪を結ってから出勤してくれるため、今のところ何とかなっているが———
今日も上手く乾かせなかったことを思い出しながら髪に手を遣った美寧に、怜が『ご飯を食べたら髪を梳いてあげますよ』と申し出てくれた。怜に髪を触られるのが好きな美寧は、笑顔で「うん!」と大きく頷いたのだった。
「任せてばっかり、なんてことないよ?お夕飯だって朝ごはんだって、ほとんどれいちゃんが作ってくれてるんだし」
思いきり上を向いて、自分の後ろで膝立ちになっている怜に美寧は言った。
温かいホットカーペットの上でブラッシングしてもらえると、とても気持ちが良い。体の中がぽかぽかしているのは、さっき飲んだジンジャーカモミールのおかげ———だけだろうか。
「大したものは作れていませんが……」
そう言って眉を下げた怜に、美寧は力を込めて言う。
「そんなことないよ!いつもすごく美味しいもん!」
「ありがとうございます………ミネの作ってくれたサラダも美味しかったですよ?」
「ほんと?……それなら良かった」
笑顔になった彼女とは反対に、怜は何故かまた眉を下げた。