耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「お弁当作りもお休みにしてしまっていて、申し訳ないです。せっかく慣れてきたところだというのに……」

「そんな……気にしないで、れいちゃん。これ以上働いたられいちゃんが倒れちゃうよ。私ならアルバイトの時は賄いもあるし、お休みの日は、お夕飯の残りで全然大丈夫だよ?」

「ミネ……」

なお眉を下げたままの怜につられて、美寧の眉も下がり始める。

「私がもう少しちゃんとお料理が出来るようになってたら良かったんだけど……。ごめんね、れいちゃん」

「ミネが謝ることはありません。今のままで十分ですよ?洗濯や掃除もやってもらってずいぶん助かっています」

「ほんと……?」

「はい。本当です」

「良かったっ!」

目を輝かせながら笑顔で喜ぶと、額に温もりが触れ、軽く音を立てて離れていく。

予期せぬ怜のくちづけに、美寧の頬にサッと朱がさす。
思わずそこに手を当ててしまった美寧を見て、くすりと笑った怜が、またブラシを動かし始めた。

(………また……おでこ、かぁ………)

不意打ちのキスは恥ずかしくも嬉しいけれど、それが額だったことを美寧は少し残念に思ってしまう。

(今日もまだ“特別なキス”……してもらってないな………)

朝の見送りの時には唇にキスを貰ったが、ごく軽い“挨拶”のキスだった。

さっき出迎えたときも———


『ただいま帰りました』と彼が言った後、ふわりと羽のように触れた唇は少し冷たかった。
それは彼がさっきとても寒い場所にいたことを証明していた。
美寧は彼が風邪を引かないか心配になる。と同時に、なぜか怜が少し“遠く”感じた。


冷たいと感じた場所は“唇”ではなく“額”。

もしかしたら、帰宅直後で冷えていたことを気遣ってくれたのかもしれない。
そう考えようとしたけれど、どうしても引っかかってしまう。
なぜなら兄が突然この家にやってきて以降、怜と“恋人練習”をしていないからだ。

ちょうど怜の仕事が忙しくなってきて、一緒にいる時間があまりない。
今日みたいに怜の遅めの夕飯の時にお喋りが出来れば良い方で、下手したら朝挨拶程度にしか顔を合わせることしか出来ない日もある。
だから前みたいにゆったりと過ごす時間がないから、“恋人練習”を出来ないのも仕方ない、と思う。

———けれど

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