耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
聞こえた言葉に美寧は心の中でそう思ったけれど、乱れた息を整えるので精一杯。
くたりと怜の胸に寄りかかり、肩で息をついている美寧の髪を、怜はゆっくりと撫でる。そして低い声で言った。

「講義中に学生が遅れて入ってきたことは、分かっていました」

怜の言葉に、美寧の肩がピクリと跳ねる。さっき美寧が講義に紛れ込んだ時のことを言っているのだと、すぐに気が付いた。

髪を滑る背中の手に、それが伝わったのだろう。彼の手が一旦止まる。けれど、その手はまたゆっくりと髪の上を滑り始めた。

「学生が遅れて入ってくることはよくあることなので、それは気にしていませんでした」

『気にしてない』という言葉に、ホッと肩を撫でおろす。けれど、その安堵は一瞬で覆された。

「ですが―――教壇からあなたが見えた時、息が止まるかと思いました」

「しかも、隣の男の子と仲良さそうに顔を寄せ合っている」

「あと少しで私語を注意しようかと思っていました」

怜が坦々と続けた言葉に、美寧の顔からサーっと血の気が引いた。

「あのっ、えっと……」

怜の腕の中から顔を上げて、口を開いた美寧。けれど、続く言葉を失ってしまう。自分をじっと見つめる怜の顔が、今まで見たことのないような表情だったのだ。

困った時に彼が浮かべる微苦笑でもなく、優しく美寧を見つめる瞳もない。
だからと言って睨んでいたり、あからさまに怒っている風ではない。浅く眉間に皺を寄せて、ただ真っ直ぐに美寧を見つめているだけ。

(さっきは『怒ってない』って言ってくれたけど、やっぱり私、れいちゃんのお仕事の邪魔をしてしまったんだわ……)

怜が初めて見せる表情(かお)がそのせいとしか思えなくて、美寧は急いで謝ろうと口を開きかける。けれど先に口を開いたのは、怜の方だった。

「―――そんなに楽しかったですか?」

「え、」
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