耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
兄の気持ちも分かる。
祖父が亡くなって父の家に戻ったばかりのころ、美寧も兄の帰国が待ち遠しかった。早く一緒に住めるようになりたいと願っていた。
けれど、美寧は出会ってしまったのだ。怜と。
怜を想う気持ちは、兄を、家族を想う気持ちとは違う。
怜と別々の場所にいる時も、美寧の心の中にはずっと彼の居場所があって、そこはきっともう彼以外の何ものにも埋めることは出来ない。
もし、怜がいなくなったら———そう考えるのも嫌だけれど———心を半分もぎ取られたような、決して埋まらない空洞が出来るだろう。
たとえ家族と離れ離れになろうとも、怜と離れることなど考えたくない。考えられない。
『怜とずっと一緒にいたい』
それが美寧の唯一で、絶対の願いなのだ。
黙ったまま何も言わない妹に、聡臣は「ふぅっ」と軽い溜め息をこぼした。
「父さんが………」
「え、……お父さまが、どうかされたの?」
ポツリとこぼした兄の言葉に、美寧はすぐさま反応する。そんな妹の姿に兄が苦いものを噛んだような顔になる。
「………父さんは……前から知っていたんだ………」
「えっ、」
「おまえがどこにいるか……誰といるのかってことを………僕が報告する以前から、ちゃんとおまえの居場所をご存じだった」
「っ!」
両目を見開いた美寧。聡臣は続ける。
「『知っててどうして迎えを寄越さなかったんだ』って詰め寄った僕に、父さんは言った。『今はいい———何かあれば連れ戻す』って」
「っ!」
息を呑んだ美寧。そんな妹から視線を外した聡臣が呟くように言った。
「藤波さんの研究が打ち切られるのは、もしかしたら………」
「えっ、どういうこと!?……れいちゃんの研究が打ち切りって………どうして!?」
詰め寄るように身を乗り出した妹に、聡臣はさ迷わせていた視線を戻し、言った。
「僕が手にした報告書には、『藤波准教授は研究打ち切りの懸念有り』とあった。彼が研究を続けるための費用を出していた受託企業が、研究提携の打ち切りを決めたと報告を受けている」
「研究の費用……打ち切り……」
祖父が亡くなって父の家に戻ったばかりのころ、美寧も兄の帰国が待ち遠しかった。早く一緒に住めるようになりたいと願っていた。
けれど、美寧は出会ってしまったのだ。怜と。
怜を想う気持ちは、兄を、家族を想う気持ちとは違う。
怜と別々の場所にいる時も、美寧の心の中にはずっと彼の居場所があって、そこはきっともう彼以外の何ものにも埋めることは出来ない。
もし、怜がいなくなったら———そう考えるのも嫌だけれど———心を半分もぎ取られたような、決して埋まらない空洞が出来るだろう。
たとえ家族と離れ離れになろうとも、怜と離れることなど考えたくない。考えられない。
『怜とずっと一緒にいたい』
それが美寧の唯一で、絶対の願いなのだ。
黙ったまま何も言わない妹に、聡臣は「ふぅっ」と軽い溜め息をこぼした。
「父さんが………」
「え、……お父さまが、どうかされたの?」
ポツリとこぼした兄の言葉に、美寧はすぐさま反応する。そんな妹の姿に兄が苦いものを噛んだような顔になる。
「………父さんは……前から知っていたんだ………」
「えっ、」
「おまえがどこにいるか……誰といるのかってことを………僕が報告する以前から、ちゃんとおまえの居場所をご存じだった」
「っ!」
両目を見開いた美寧。聡臣は続ける。
「『知っててどうして迎えを寄越さなかったんだ』って詰め寄った僕に、父さんは言った。『今はいい———何かあれば連れ戻す』って」
「っ!」
息を呑んだ美寧。そんな妹から視線を外した聡臣が呟くように言った。
「藤波さんの研究が打ち切られるのは、もしかしたら………」
「えっ、どういうこと!?……れいちゃんの研究が打ち切りって………どうして!?」
詰め寄るように身を乗り出した妹に、聡臣はさ迷わせていた視線を戻し、言った。
「僕が手にした報告書には、『藤波准教授は研究打ち切りの懸念有り』とあった。彼が研究を続けるための費用を出していた受託企業が、研究提携の打ち切りを決めたと報告を受けている」
「研究の費用……打ち切り……」