耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
なんて返してよいのか返事に困って黙ってうつむいた美寧。
そんな美寧に、颯介は大きな溜め息をついた。

「だから言ったのに……藤波准教授は大人なんだ。大人なんてみんな、僕たち"こども"を自分の都合の良いように言いくるめることなんて簡単なんだよ」

「っ、れいちゃんは……そんなことしないっ!」

「じゃあなんで泣いてるんだよ!先生に泣かされたんじゃないの?!君とは遊びだったって、振られたとか?」

「ちがっ、」

「じゃあ何?大学(こんなところ)まで遊びに来て、仕事の邪魔をするなって叱られた!?」

「っ、」

『仕事の邪魔』

颯介が放ったその言葉は、鋭利な刃物のように美寧の胸に突き刺さった。
自分の存在自体が、怜の仕事の邪魔になっていると知ったばかりだ。

言葉に詰まった美寧を見て、颯介は言い過ぎたと思ったのか、小さく溜め息をついて声のトーンを下げた。

「………どのみち、先生は今君にかまっているどころじゃないんだ。研究が続けられるかどうかの瀬戸際なんだから」

「どうして……颯介くんがそれを………」

颯介が怜の研究が大変なことを知っていたことに驚いた。
学生の颯介が知っているほど、怜の研究の打ち切りは大学中に知れ渡るほどの大変な事態なのだと青ざめる。けれどすぐに美寧は颯介が言った言葉に少しだけ安堵する。

「僕……実は、親戚にこの大学の関係者がいて、企業と研究室を繋ぐ場所(CCO)で働いてるんだ。その人から聞いたんだよ、藤波先生の研究のこと」

「そうだったんだ………」

「だから美寧ちゃん。君はもう帰った方がいい」

美寧のことをまっすぐに見つめてそう言った颯介に美寧は考える。

(私……れいちゃんの家に帰ってもいいの………?)

このまま怜の家に帰る方がよいのかどうか決められない。
ついさっきまでと同じ思考が頭を占拠し始めた時、颯介がさっきより強い口調で言った。

「美寧ちゃん。君はもう自分の……“当麻”の家に帰った方がいい」

「っ!」

美寧は両目を見開き、息を呑んだ。

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