耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
それまでは、まるで怯えたかのように身を固くしていたのに、とたんに食って掛かるほど前のめりになって反論しはじめた美寧に、颯介は一瞬ひるんだものの、逆にムキになった。

「確かに順番は関係ないかもしれない。でもっ、だからって結ばれるわけじゃないだろっ!」

「っ、」

「そうだろ?先に出逢ったのは藤波先生だったかもしれない。でも、父親に反対されたらダメになるんだ。それじゃ順番なんて関係ないじゃないか!現に先生は今、研究が出来なくなってるじゃないかっ」

「どうして———」

美寧が漏らした声に、颯介がハッとなった。

「どうして、颯介くんがそんなことまで知ってるの……?」

「………」

「ねぇ、どうして?……答えてよ颯介く、」

「僕が知らせたんだ」

「え、」

「僕が連絡した。君の父親に」

「っ、な、んで………」

「そりゃそうだろ?自分の“許嫁”を見つけたんだ。その親に連絡するのは普通じゃないの?僕は本来そうなるはずだったとこに戻しただけだ」

「ひどい………」

「なにがひどいんだよ。ひどいのはそっちだろ?僕との見合いをすっぽかして逃げたんだから」

「そ、それは………」

言葉に詰まる美寧を睨むように見つめ、颯介が言った。

「別に僕は君の居場所を伝えただけで、『藤波准教授の研究の邪魔をしてください』なんて頼んだ覚えはない。僕だってさすがに先生に嫌がらせをしたいと思ってるわけじゃなんだ」

「………」

「ただ僕は、……美寧ちゃんに僕を見て欲しかった……」

「………」

「初めて会った時から、僕は君のことが好きなんだ」

颯介の突然の告白に、美寧は大きく瞳を見開いた。

そして次の瞬間、美寧は颯介に抱きすくめられていた。

美寧の背中の向こう側に、黒い傘が転がっていく。


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