耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
泣いて許されるなんて思っていない。それが許されるのは子どもだけだ。

日ごろから“早く何でも出来る大人になりたい”と思っている美寧だ。そんな子どもじみた行為はしたくないと唇を噛み締めた。

「この場にそぐわない格好で遊びに来てしまって、れいちゃんのお仕事の邪魔をしてしまって、本当にごめんなさい」

「ミネ……」

「マスターに頂いたデザート、大人しくお家に持って帰れば良かったね……これからは気を付けます」

美寧の下瞼に溜まった涙の雫は、美寧が最後の言葉を言い終わると同時に、ポロリと零れ落ちた。美寧は手の甲で涙を拭うと、隣に置いてあるバッグを掴んで、勢いよく立ち上がった。

「わ、私、もう帰るね!邪魔してごめんなさいっ」

ドアへ足を踏み出したとき、美寧の手首を怜が掴まえた。ぐっと引かれてたたら(・・・)を踏み、バランスを崩した。

あ、と思った次の時には、美寧の体は温かなものに包まれていた。


「泣かないで―――」

耳のすぐ傍から聞こえた声に、我に返った。いったい自分がどうなっているのか、理解するのに時間がかかる。

貴女(あなた)を悲しませたかったわけじゃないのです」

どうやら自分は怜の膝の上に横抱きに抱えられているのだと、美寧はやっと気付いた。

「邪魔だなんて思っていません。それどころか、ミネと一緒にここでお昼を食べられると思わなかったので、とても嬉しかったです」

怜の言葉に、さっき拭ったばかりの美寧の頬がまた濡れ始めた。その頬を怜の手が優しく拭い、目元にそっとくちづけを落とす。

「すみませんでした」

「れいちゃんは悪くないっ、私が、」

勢いよく上げた顔をブンブンと左右に振った美寧に、れいも小さく首を振る。

「いいえ、俺が言葉足らずでした」

「そんなこと……」

怜は覗き込むように顔を傾け、美寧の潤んだ瞳を見つめながら言った。

「そのワンピース、とてもよく似合っています。大学に着てくるのにおかしいところはありません」

「そう、…かなぁ?」

「はい。おかしい、というよりむしろ………」

少しだけ迷ったそぶりを見せた怜。
そんな彼の様子に、(やっぱりどこかダメなところがあったのだ)と、美寧はショックを受けかけた。けれど、怜の次の言葉に目を丸くした。

「むしろ魅力的すぎます」

「え?」

「みんながあなたのことを見ていました」
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