耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]
当時、総一郎は父親が社長をつとめる企業の一社員として働いていた。
一社員とは言いながらも、実際はその会社の御曹司。明治創業の麦酒醸造会社として、近代までに飛躍的な発展を遂げた大企業だ。
その社長である父親の代理で出席したパーティで、総一郎は清香に出逢った、という。
そう語る総一郎の目は、美寧を通り越してどこか別の、遠く懐かしいものを見ているようで———
「きっかけは清が金平糖をばらまいたことだった」
「ええっ!金平糖を!?」
父と母のなれそめに、美寧は思わず目を丸くする。
「話は長くなるから」と言われもう一度ソファーに腰を下ろした美寧。その目の前にある金平糖を思わず見つめてしまう。
どうやったら、パーティ会場で金平糖をばらまくことになるのだろうか。
その疑問が顔に出ていたのだろう。美寧の疑問の答えを父が口にした。
「着物の……振袖のたもとに金平糖の入った小さなケースを入れていて、それを何かのはずみで落としたらしい」
父はそのときを思い出したのか、「ふっ」と忍び笑いをもらす。
「清は『不安になった時に金平糖を食べると落ち着く』と言っていた。きっと初めての社交場で緊張していたのだろう」
父と出逢った時の母は、今の美寧と同じ年だと聞いた。
それならきっと、パーティ会場で知らない人にたくさん会うことはとても緊張するだろう。
父のことをまっすぐに見つめなら、その話を食い入るように聞いている美寧に、総一郎もよどみなく先を続けていく。
「心を奪われる、というのはこういうことなのか———あのとき私はそれを身もって知ったのだ」
当時、総一郎は父親が社長をつとめる企業の一社員として働いていた。
一社員とは言いながらも、実際はその会社の御曹司。明治創業の麦酒醸造会社として、近代までに飛躍的な発展を遂げた大企業だ。
その社長である父親の代理で出席したパーティで、総一郎は清香に出逢った、という。
そう語る総一郎の目は、美寧を通り越してどこか別の、遠く懐かしいものを見ているようで———
「きっかけは清が金平糖をばらまいたことだった」
「ええっ!金平糖を!?」
父と母のなれそめに、美寧は思わず目を丸くする。
「話は長くなるから」と言われもう一度ソファーに腰を下ろした美寧。その目の前にある金平糖を思わず見つめてしまう。
どうやったら、パーティ会場で金平糖をばらまくことになるのだろうか。
その疑問が顔に出ていたのだろう。美寧の疑問の答えを父が口にした。
「着物の……振袖のたもとに金平糖の入った小さなケースを入れていて、それを何かのはずみで落としたらしい」
父はそのときを思い出したのか、「ふっ」と忍び笑いをもらす。
「清は『不安になった時に金平糖を食べると落ち着く』と言っていた。きっと初めての社交場で緊張していたのだろう」
父と出逢った時の母は、今の美寧と同じ年だと聞いた。
それならきっと、パーティ会場で知らない人にたくさん会うことはとても緊張するだろう。
父のことをまっすぐに見つめなら、その話を食い入るように聞いている美寧に、総一郎もよどみなく先を続けていく。
「心を奪われる、というのはこういうことなのか———あのとき私はそれを身もって知ったのだ」