耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「美寧———おまえは清香(さやか)に……亡くなったお前の母親に、本当よく似てきた……」

「えっ、」

唐突に母の名前を言われて美寧は戸惑った。それまでの話とのつながりもまったく見えてこない。そんな美寧をよそに、父は部屋をぐるりと見まわした。

「ここに来るのもずいぶん久しぶりだ……」

しみじみと呟いた父。その顔には「懐かしい」と書いてある。

「前にここに来たのは……たしか………」

父の独り言に、美寧も思い返す。確か自分が幼かった時。兄と一緒に父がこの祖父の家を訪れた。あれはいくつの時だっただろうか。

「私はずいぶんここには顔を出していなかった……ここに、というよりも杵島の義父(ちち)に、だが」

「おじいさまに………」

「ああ。私はおまえのおじいさまに嫌われていたからな」

「そんなっ、……そんなことって………」

「いや、そうなんだ。おまえは知らなかっただろうが、おじいさまは……(さや)の父親は、私のことを死ぬまで許さなかった———娘のことを自分よりも早く逝かせてしまった私のことを」

「っ、」

父の言葉に美寧は両目を大きく見開いた。

(さや)に初めて会ったのは、とある社交の場(パーティ)だった———」

総一郎は坦々と話を続けた。自分と妻である清香のことを———。


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