耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「いいや、歌寿子さんのせいではない。すべて私の責任だ」

「だんさん………そないなこと、」

「いや、幼い美寧に寂しい思いをさせたのも、杵島の義父(ちち)の怒りが解けなかったのも、結局は全部私が不甲斐ないせいなんだよ」

それでもまだ何か言いたげな歌寿子を、総一郎は軽く首を振ることで押しとどめる。

「私がここに来なかったのは、義父に(いと)われていたせいもあるが、それだけじゃない」

総一郎は歌寿子から美寧に視線を移した。そして静かに言った。

「美寧に会うのが怖かった———」

「え、」

目を見張って固まった美寧。

「妻を……清香を亡くしたつらさを少しでも忘れたくて、私はあの時期仕事にのめり込んでいた。それこそ寝食を忘れるほど———。家に帰っても彼女の姿がない。そのことがつらくてたまらず……仕事をしていれば家に帰らなくていい。シッターさえ居れば大丈夫だろう、そう思って家を留守にばかりしていた」

遠い目をした父は語り続ける。

「そのせいで幼いおまえの変化に気付かなかった……だから三歳のおまえは、それまで住んでいた祖父の家とは違う場所で暮らし始めたところに、急に母親がいなくなり、父親の私からも放っておかれて………そのせいで体調を崩し、肺炎になりかけた」

「もう一度杵島の家に戻ることになった時、おまえのおじいさまに言われたんだ。『娘だけでなく孫まで死なせる気か』と———」

「そ、そんなっ、そんなこと………お母さまのことも私のことも、お父さまのせいでは、」

「いや、『その通り』だと思ったよ。そんな私に、この子の親である資格はないのだ———と」

「そんな………」
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