耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「『ちゃんと話を聞く』のはおまえの方だよ———美寧」

柔らかく瞳を細めた父。まるでそれは「美寧のことを(・・・・・・)愛しい」と思っている表情(かお)で———

「私が『無理だ』と言ったのは、『おまえのことを娘と思わない』ことだ。おまえは愛する妻の忘れ形見で、ずっと私の大事な一人娘だ。それはこれから先も変わらない」

「え、」

「手元できちんとおまえを育てることが出来なかった私が、こんなことを言うのもどうかと思うが、それでも、おまえのことを気にかけない日はなかったよ」

「え………」

「早く戻って来てほしいといつも思っていた。だから、中学生になる時には呼び戻すつもりだった。が、おじいさまに反対された。美寧は慣れ親しんだ場所で進学した方が良いと———美寧の希望もそのつもりだ、と」

そう言われ、当時のことを振り返る。
小学校から中学に上がる時に、祖父に中高一貫の女子校を勧められた。祖父の家からだと少し遠いけれど、車で送迎すると言われ、父の了承も貰っていると聞いた。

「………私はお父さまもその方がいいと思っていらっしゃるとばかり………」

「そうか………」

黙り込んだ二人。見るに見かねたように、聡臣が口を挟む。

祖父(じい)さんは自分が嫌っている父さんに、美寧を返さなかったってことですか?」

「………おじいさまは美寧のことを本当に可愛がっていて、手放したくなかった、ということだろう」

聡臣の言葉にそう言った父が、「それと、なにか思い違いがあるようだが———」と続けた言葉に、美寧は両目を大きく見開いた。
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