耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
もうその頃には総一郎が杵島家に顔を出すことは皆無と言っても良いくらい。けれど、この時ばかりは時間を作って義父の元へ直接話をしに行った。電話だと取り次いでもらえず、繋がることがあったとしても、話の途中で一方的に切ってしまわれるせいだ。

『美寧のことを勝手に決められるのは困ります、お義父(とう)さん!』

『お前に「おとうさん」と呼ばれたくはない———娘を死なせたうえに、孫娘にまで同じことをくり返そうとしたお前に!』

『っ、———清香のことも美寧のことも私の責任です。ですが、それとこれとは………父親の私になんの断りもなく、』

『うるさい!お前に父親を名乗る権利はない!!これまでずっと美寧のことを放っておいたお前には』

『っ———、』

『美寧はわしのことを「大好き」だといつも言っている。幼い時からずっと過ごしたこの家にいる方が、美寧にとっても良いに決まっているだろう。———わしは今でも後悔している。清香をおまえなんかに嫁がせたことを……。わしが選んだ相手と結婚していれば……そうしたらあの子はあんなに早くに逝ってしまうこともなかっただろう』

言葉を返すことが出来ない総一郎に、榮達(えいたつ)は鋭く言い放った。

『今度こそ間違えない。美寧の相手はわしがちゃんと選んでやる———美寧が二十歳になったら、年明けに許婚と正式な顔合わせをする』

榮達はそれだけ言うと、もう用は済んだとばかりに、総一郎を杵島家から追い返した。


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