耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「そ、そんなことが……私、全然知らなくて………」
「おまえは学校に行っていて留守だった。それに、お祖父さまは私のことを口にするのも嫌だったのだろうな」
「じゃあ、美寧の許婚との顔合わせを決めたのは祖父さんだったってことですか……」
父は、聡臣の言葉に頷くと、言った。
「私はてっきり美寧も知っているものだとばかり………おじいさまとおまえの間で話がついていて、そのあとに私のところに報告があったのだと思っていたんだが………」
「おじいさまはそんなことは一言も………」
「だからって、戻ってきて一年で嫁に出さなくても!………父さんは、美寧と家族水入らずで過ごしたいと思わなかったんですか!?」
聡臣の容赦のない追及に、渋い顔をした父が答える。
「本当だったら、予定通り今年の正月に相手方と会う予定だった。だが、お祖父さまが突然亡くなってしまった。だからあちら側と話し合って、顔合わせはおじいさまの喪が明けてからにすることになったのだ」
「それって……お父さまが書斎に私をお呼びになって、『許嫁との顔合わせが決まった』とおっしゃった時のことですか………?」
「ああ」
「ということはもしかして、祖父さんが亡くなってなかったら、美寧は我が家に戻ってくることもなかったということですか?」
「………そうだな」
娘と息子の問いかけに、順に頷いた総一郎。それを最後に、居間に沈黙が落ちた。
それぞれがそれぞれに複雑な表情を浮かべる。なんと言ったら良いのか分からないような、微妙な空気が流れていた。