耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

「れいちゃんは悪くないのっ、私のことを助けてくれただけ………私、自分のこと、ちゃんと説明しなかった……でも、黙って家に置いてくれて………れいちゃん、すごく優しくて……私はそんな彼が大好きで………いっしょにいたいの……ただそれだけ、なの………」

最後の方は涙で声がふるえてしまった。
丸く大きな瞳に、今にもこぼれそうなほどのしずくを(たた)えた美寧。
唇を噛み締めて、それでもなお、ちゃんと父に自分の気持ちを伝えようと口を開きかけた時、隣から静かな、それでいてしっかりとした声が聞こえてきた。

「当麻社長。ミネと———お嬢さんとのお付き合いを認めていただけませんか?」

「れいちゃん………」

斜めに見上げる怜の横顔は、いつもより少し硬い。彼は父から少しも目を逸らさずに言った。

「私は美寧を愛しています」

「っ、」

「彼女が【Tohma】という大企業のご令嬢だとは知りませんでした。准教授と言う肩書だけの、普通の人間の私では分不相応かもしれません。ですが、それでも、私の持ちうる限りのすべてで、彼女のことを幸せにしたいのです」

「れい…ちゃん………」

(こら)えきれずに美寧の瞳からあふれ出した涙。

怜は、大粒の涙をポロポロとこぼしながら、まっすぐに見上げてくる美寧に微笑むと、彼女の頬をそっと指で拭い、再び総一郎の方に向き直った。

「お願いします」

そう言って頭を下げた怜。

「お願いします、お父さま!」

彼の隣で、美寧も一緒に頭を下げた。
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