耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
沈黙が一分なのか十分なのか分からない。永遠にも感じるほどの重たい沈黙の中、父が長い息を吐いた。

「顔を上げなさい———二人とも」

促されゆっくりと顔を上げる。美寧に続いて怜も顔を上げたところで、父が話し始める。

「藤波さん」

「はい」

「私は知っている。あなたが大学の准教授で、どんな研究をしているのか。そしてその分野で大きな成果を上げている研究者だということも」

「はい」

大学(しょくば)を始めとして、プライベートでも周りからの評価が高い、真面目な人物だということも。早くにご両親を亡くされたのに、それでも自分の力でここまで来たということは素晴らしいことだ」

「お父さま………」

父の口から出た思いも寄らぬ賛辞に、美寧は目を丸くする。
父が怜の職業を既に知っているということは分かっている。でなければ、研究に圧を掛けたりできないだろう。

(評価はしているけど、私とのことは認めない。……ということなの!?)

もしかしたら、「娘のことを諦めなければ、研究だけでなく大学にも居られなくする」と言うつもりなのか———そんな不安が過った、その時。

「娘を……体を壊した美寧のことをここまで良くしてくれて、本当に感謝する———ありがとう」

「えっ!お父さま!?」

怜に向かって頭を下げた父に、美寧は驚愕した。
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