耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「美寧の笑顔………」
「ああ。だが、まったく思い出せなかったよ。そのことに愕然とした。あんなに幸せそうに笑う美寧を見たことがないなんて………」
「父さん………」
「途中で美寧が呼ばれ、その時に相手に向けた笑顔は、それまでよりも何倍も幸せそうな笑顔で………私にはそんな顔を見せたことはなかった」
「お父さま………」
困惑する娘に向かって、父は微苦笑を浮かべ言った。
「美寧が私を見る顔は、いつも不安そうにうかがうものばかりだ。娘の笑顔を思い出せない。娘を笑顔にすることも出来ない。そんな父親が、娘を愛する人から引き離すことなんて出来ない」
「あいする…ひと………」
「すぐに分かったよ。おまえは彼のことが好きなのだと」
「どうして………」
「清が私に向けたものとまったく一緒だったからな」
懐かしそうに、そしてせつなそうに瞳を細めた父は、やるせない溜め息をついた。
「おまえが———美寧が良いなら良いと思ったのだ。幸せそうな笑顔をもう曇らせたくなかった。だからその時は声をかけずに帰った」
「声くらいかければ良かったじゃないですか。無理に連れ帰るつもりはない、と言っておけば、美寧だって………」
聡臣の声には、少し納得がいかないという不満が滲んでいた。そんな息子に「おまえだって分かるだろう?」と父が言う。
「何がですか?」
「他の者には幸せそうに笑っていた美寧の顔が、自分を見た瞬間に凍り付く。おまえなら、そんなところを見たいと思うか?」
「………嫌です」
聡臣は渋い顔になった。
自分が藤波家を訪れた時の、美寧の態度を思い出したのかもしれない。
「ああ。だが、まったく思い出せなかったよ。そのことに愕然とした。あんなに幸せそうに笑う美寧を見たことがないなんて………」
「父さん………」
「途中で美寧が呼ばれ、その時に相手に向けた笑顔は、それまでよりも何倍も幸せそうな笑顔で………私にはそんな顔を見せたことはなかった」
「お父さま………」
困惑する娘に向かって、父は微苦笑を浮かべ言った。
「美寧が私を見る顔は、いつも不安そうにうかがうものばかりだ。娘の笑顔を思い出せない。娘を笑顔にすることも出来ない。そんな父親が、娘を愛する人から引き離すことなんて出来ない」
「あいする…ひと………」
「すぐに分かったよ。おまえは彼のことが好きなのだと」
「どうして………」
「清が私に向けたものとまったく一緒だったからな」
懐かしそうに、そしてせつなそうに瞳を細めた父は、やるせない溜め息をついた。
「おまえが———美寧が良いなら良いと思ったのだ。幸せそうな笑顔をもう曇らせたくなかった。だからその時は声をかけずに帰った」
「声くらいかければ良かったじゃないですか。無理に連れ帰るつもりはない、と言っておけば、美寧だって………」
聡臣の声には、少し納得がいかないという不満が滲んでいた。そんな息子に「おまえだって分かるだろう?」と父が言う。
「何がですか?」
「他の者には幸せそうに笑っていた美寧の顔が、自分を見た瞬間に凍り付く。おまえなら、そんなところを見たいと思うか?」
「………嫌です」
聡臣は渋い顔になった。
自分が藤波家を訪れた時の、美寧の態度を思い出したのかもしれない。