耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「大丈夫ですよ、ミネ」
「落ち着きなさい、美寧」
怜と父の声が同時に耳に届いた。
隣を振り仰ぐと、怜が優しく頷いてくれる。
「藤波准教授の酵母ゲノムの研究は、私たちグループにとってもとても興味深く、新たなビジネスを生むチャンスになるだろう。月松は受託を解消したのはちょうど良い。そのままその受託研究を当社が請け負おう」
「………どういう……こと……?」
父が言っていることがきちんと理解できず、美寧は隣を振り向く。
まっすぐに父を見る怜の瞳が、大きく見開かれていた。
「美寧。父さんは、藤波さんの研究にTohmaが費用を出すとおっしゃったんだ」
「えっ!本当に!?お父さま!」
「ああ。———詳しいことはまた後日。ビジネスの話はまた、しかるべき機関を通して正式に行うことにしよう」
「はい。ありがとうございます」
「ありがとう、お父さま!」
父にお礼を言った美寧は、怜を見上げて「良かったね、れいちゃん」と大きな笑顔を向ける。
怜はそれに頷いた後、もう一度総一郎の方へ顔を向けた。
「当麻社長。改めて、私と美寧さんとのお付き合いを認めていただけますか?」
少しもひるむことなくハッキリと言った怜に、総一郎は目を見開いた。そして「はぁ~」と溜め息をついてから口を開く。
「もとから反対していない」
「良かった。———これで、ミネを連れてフランスに行かずに済みます」
「えっ!そんなことを考えていたのか……」
怜の言葉に驚いた声を上げたのは聡臣。反対に美寧は驚きすぎて声も出せなかった。
庭で抱きしめられた時に、『あなたをさらって海の向こうへ逃げてもいい』と言われたのは本気だったのか———。
「あくまで最終手段のつもりでした。どんなことがあっても、私が彼女を手放すことだけはありません」
「れいちゃん……」