耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「娘を海外に連れて行かれたらたまらんな……一緒に住むことは出来なくても、たまに元気な顔を見るくらいはしたい」

「お父さま、それって!」

「美寧を連れ戻さないということですか、父さん」

「美寧が帰って来たいと言うならいつでも戻ってきたらいい。これまでずっとおじいさまや私に従ってきたのだ。もうこれからは自分のことは自分で決めなさい。———美寧は?どうしたいのだ?」

「れいちゃんと一緒にいたいです!彼のそばを離れることなんて出来ない……」

美寧の即答に父が頷く。その目は優しく温かい。

「許嫁の話は、こちらから正式に断りを入れておこう」

「本当?」

「ああ」

「ありがとう………お父さま」

「ありがとうございます」

美寧と怜は二人揃って父に頭を下げた。

総一郎はそんな二人に目元を和らげた後、ただ一人項垂(うなだ)れている人物を見て、呆れたように言う。

「聡臣。いいかげんにお前も妹離れをしなさい」

「………はい……」

返事はしたものの項垂れたままの息子に溜め息をつくと、総一郎は怜の方に向いた。

「藤波君」

「はい」

「私みたいな不甲斐ない父親が言う台詞ではないかもしれないが、娘を……美寧をよろしくお願いします」

「はい」

「お父さま……」

「でもたまには私のところへも顔を見せにおいで———彼と一緒に」

「はい!」

美寧が浮かべた大きな笑顔に、一瞬目を見張った総一郎は、とても嬉しそうに微笑んだ。


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