耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「れいちゃん!」

「おはようございます、ミネ」

「おはよう。———見て、雪が……」

「とても美しいですね、雪の庭。———でもそんな薄着では風邪を引いてしまいますよ」

「あ、……」

美寧はその時初めて自分が夜着のままだということに気が付いた。ガウンを羽織ってくるのも忘れて部屋を飛び出したのだ。

怜が、自分が着ていた厚手のニットカーデガンを脱ぎ、美寧の肩にかけてくれる。

「これ………」

見覚えのある茶色いカーディガンに目を(しばた)かせる。

「お借りしたのです。有村さんが『寒いだろうから』と出して下さって」

「これ、私がおじいさまのお誕生日に贈ったものなの」

「そうだったのですか。とても温かくて着心地も良いですね」

怜に褒められて「えへへ」とはにかんだ美寧は、何かに気付いたように部屋を見回した。

「あれ?……そういえば、歌寿子さんは?」

キョロキョロと見回すがその姿はない。

奥の台所にいるのだろうか、と思った時。

「有村さんなら先ほど買い物に出られましたよ」

「そうなの?」

「ええ。急だったので朝食の材料がないから、と」

「あ、そっか………」

歌寿子は近所に自宅があって、いつも通いで来てくれていた。
故に、この家は無人だったのだ。誰も住んでいない家に食料があるわけない。
自分のせいで、歌寿子にも余計な世話をかけてしまった。美寧は自分の衝動的な行動を反省した。

「ミネ。大分体が冷えてます。もう中に入りましょう」と、怜に促された。

< 315 / 427 >

この作品をシェア

pagetop