耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
二人で昨日と同じ場所に腰を下ろす。薪ストーブにあたると、体がじわん(・・・)と溶けるような気がする。怜に言われた通り思ったよりも体が冷えていたみたいだ。

ストーブの火の揺らめきをぼうっと見つめていると、怜が美寧の顔をのぞき込んで来た。

「あまり顔色がよくありませんね……ゆうべ遅かった割には早起きですし。あまり眠れませんでしたか?」

「う~ん……眠れなかったわけじゃないんだけど………」

昨夜、父との話し合いが終わったのは深夜だった。
長い間のわだかまりが解け、もっと色々と話したいことや聞きたいがあった。
けれど、『今日はもう遅うおます。続きはまた明日にしはったらどないだすか?』と歌寿子に促され、その場はお開きに。

それで結局、父と兄、怜もこの杵島家に泊まったのだ。

慣れ親しんだ『自分の部屋』で、『いつもベッド』『いつもの枕』のはずなのに、なぜかなかなか寝付けなかった。

この数時間のうちに分かったことで、美寧は興奮状態にあったのだろう。
目を閉じて寝ようとすると、色々なことが次々と頭によぎっていく。

父と祖父の関係。父に愛されていたこと。怜が研究を無事続けられること。怜とのことを父が認めてくれたこと。
小さなことでは、初めてこの家に父と一緒に泊まることも。

めまぐるしく入れ替わる思考に目が冴えてしまい、体は鉛のように重いのに、意識だけは細く尖っているよう。
なんとか努力して眠りについたが、結局数時間で目が覚めてしまった。

そんなことを考えていると、怜の左手が美寧の頬に触れた。

「それに………少し腫れています」

心配そうにのぞき込んでくる怜に、親指で目元をなぞられた。
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