耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
美寧がいなくなった時、マスターも怜と一緒に美寧のこと探してくれたのだと後になって聞いた。そのことをマスターに直接謝ったのは、熱が下がってから。

マスターは優しげな垂れ目の瞳をいからせて、『みんな心配したんだぞ』と美寧を叱り、そしてその後、『なんにしても無事で良かった』と優しく頭を撫でてくれた。

アルバイトを長い間休んでしまったことも申し訳ないと何度も謝る美寧に、マスターは『おまえが元気で笑顔な方が、お客さんはみんな喜ぶ。———もちろん俺もな』と言って、美寧の頭を手のひらでぽんぽんと軽く叩いた。


マスターは美寧にとって、もう一人の父親のような存在。そんな彼に、寂しげな顔を浮かべられたら胸が痛くなってしまう。

本当の父親である総一郎は、了解を貰う為に連絡をすると、『私はあの時にもう了承したつもりだよ』と言われた。そのつもりで、怜に『娘を頼む』と言ったのだと。
電話口だったので、父がその時どんな表情をしていたのかは分からないが、なんとなくマスターと同じような気がする。

そんな “二人の父親”のことを考えていると、隣から声がした。

「あなたの……当麻のお父さんにも、また一緒にご報告にいきましょう。出来るだけ早く」

隣を振り仰ぐと、怜の優しい瞳があった。

「———うん」

繋いだ手にきゅっと力を込めと、怜も握り返してくる。

ラプワールの前を通り過ぎたとき、美寧の薬指の付け根を絡めた指がスッとなぞった。

「にゃっ、」

予期せぬくすぐったさに、肩を跳ね上げた美寧。犯人を見上げると、ゆるんだ口元を押さながら怜が見降ろしている。

「もうっ、びっくりして変な声が出ちゃったよ………」

「変?……そんなことはありませんよ。可愛い声でした」

「かっ―――、」

「それはそうと。ずっと着けていてくださいね」

「ん?」

美寧が小首を傾げると、怜が繋いだ手―怜にとっては右手、美寧にとっては左手―を持ち上げる。そこには光り輝くものが———
< 367 / 427 >

この作品をシェア

pagetop