耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
美寧の体調がすっかり元通りになり、休んでいたアルバイトも再開したある夜。
いつものように、二人そろってソファーの上で夜のティータイムをしていた時、怜が言った。

『誕生日に欲しいものがあります』

『え?』

怜が突然言った言葉に美寧は目を丸くした。怜の誕生日はもう来週に迫っている。
編みかけだったマフラーは、熱が下がった後に追い上げをかけて頑張ったので、あと少しで出来上がりそう。けれど、さらに新たなものを間に合わせることが出来るだろうか。

『ダメでしょうか』

そう言って美寧を見降ろす怜に、美寧は慌てて口を開いた。

『ダメじゃない!れいちゃんが欲しいもの、言って?………私に出来ること?あ、今からで間に合うかなぁ………』

美寧は勢いに任せて返事をしたものの、怜の希望にそえるか不安になってくる。
すると怜が言った。

『大丈夫。あなたにしか出来ないことです』

『私にしか……出来ない?』

『はい』

なんだろう、美寧がそう思った時———

『俺の家族になってください』

『え、』

大きな瞳をさらに大きく丸くした美寧。その手を怜がそっと握る。そして戸惑う美寧に、あの“困ったような微苦笑”を向けた。

『言ったでしょう?俺は「欲張りになった」と。俺は、誕生日にあなたが欲しい。あなたの、美寧のこれからの人生すべてが———』

美寧の両手を、怜はガラス細工を持ち上げるようにそっと両手で包み込むように持ち上げ、(うやうや)しくその甲にくちづけた。

『俺と家族になって。———結婚してください、美寧』

『っ、』

開いた両目からぽろぽろと涙をこぼす美寧の顔を。伺うように怜がのぞき込んでくる。

『———ダメですか?欲張りすぎでしょうか………』

『ダメじゃないっ!……よくばり、なんかじゃ、……ないよっ、』

美寧は涙で声が詰まるのも構わず、必死に言った。

『わたしもっ、私もれいちゃんと家族になりたいっ!れいちゃんとこれからずっと一緒にいたいっ!』

『ありがとう、ミネ』

『ありがと、は……ひっく、……わたしのほうだもん~~っ、』

泣きながらそう言った美寧に、怜は優しいキスを降らせた後、美寧の指に“それ”をはめたのだ。


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