耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー

「今日はいつもより早めの夕飯にしましょうか?」

「うん!……あ、れいちゃんはお腹空いちゃったよね?朝ごはんが遅かったから、私がお腹空いてなくてお昼いらないって言ったから………」

「俺もそんなにお腹は空いていません。今朝もですが、昨日もたくさんご馳走を頂きましたし」

「そうだよね……しかもれいちゃんはたくさんお酒も飲んだし……ごめんね……」

「ん?どうしてミネが謝るのですか?」

「だって………」

昨日の大晦日。二人は美寧の実家に結婚の報告へ行ったのだ。

「夕飯を頂いたら帰ってくるはずだったのに……お父さまったら……」

藤波家から当麻家までは電車で小一時間。
行きは電車を乗り継いで行ったのだが、帰りは送迎車を出してくれるという。

『お言葉に甘えて』と怜が言ったのを皮切りに、『それなら、せっかくだから———』と父が始めたある(・・)ことのせいで、その日のうちに帰りそびれてしまったのだ。

「あんなに次から次にお酒を出してこなくても……。初めての場所なのにお泊りになっちゃて………」

息子と娘そして娘婿と初めて自宅で過ごす大晦日がことさら嬉しいのか、父は次々と“秘蔵の酒”を出してきて振舞った。

父はビールメーカーのCEOらしく、とてもお酒に強かった。
いくら飲んでもまったく顔色も態度も変化がない。グラスの中身は、実は色のついた水なのかと思ったくらいだ。
お酒に弱い美寧は飲まなかったが、その代わりなのか怜は勧められたお酒を断らず飲んでいた。

『聡臣とはほとんど一緒にお酒を飲むことはないから、怜君が付き合ってくれて嬉しいよ』と言って、始終顔を綻ばせる父。そんな父を見るのが美寧も嬉しくて、ついつい父を止めるタイミングを失ってしまった。

『大晦日に遅くまで働かせるのは申し訳ないからな運転手はもう帰らせたよ』という兄の言葉で、新年まで二時間足らずだということに気が付き、結局そのまま美寧の実家に泊まらざるを得なくなったのだ。
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