耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
腕の中の大きな犬のぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめ、「ふぅ」と小さく息をつく。すると、頭の上にポンと重みが———。
見上げると同時に、優しく頭を撫でられた。

「疲れましたか?」

そう訊いた怜は、美寧の頭を撫でた手をスルスルと髪伝いに下ろしてから、優しく美寧の頬を撫でる。美寧は「ううん」と首をふった。

「私は大丈夫……れいちゃんこそ大丈夫?疲れてない?」

初めて行った家にいきなり泊まることになり、しかも結構な量のお酒を飲まされたのだ。大変でないわけがない。

「大変だったよね……ごめんね」と謝ると、再び頭をポンポンと軽くはたかれた。

「そんなことはありませんよ」

「ほんと?」

「ええ。とても楽しい年越しでした。それに……」

「それに?」

「……久しぶりでした、誰かと一緒に新年を迎えるのは」

「れいちゃん……」

中学生の時に両親を亡くし、引き取られた祖父母も大学生のころに他界した。もしかしたら彼はそれ以来、ずっと一人で新年を迎えていたのかもしれない。

一人きりで年越しをする怜のことを想像しただけで、美寧の胸がせつなく締め付けられる。居ても立ってもいられなくなって、胸に抱いていたものを横に置き、横からぎゅっと怜に抱き着いた。

「ミネ……?」

頭の上から不思議そうな怜の声が降ってくる。
けれど美寧は、その腕をほどくどころかさらに力を込め、潤み始めた瞳をつむって、ただ黙って怜を抱きしめていた。
そうしていると、怜の腕が美寧の肩にゆっくりと回され優しく抱き寄せられる。

「こうしてこれからずっとあなたと新しい年を迎えられるなら、それがどこであっても俺は全然構いません」

肩に回る腕に力が入り、押し付けられた胸板の硬さが頬に伝わる。

「ですが、今年はこれまでの分が一気にやってきたようなにぎやかで年越しで、とても幸せでした」

怜はとても穏やかな声でそう言った後、前髪の生え際あたりに柔らかなくちづけを落とした。

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