耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「お父さまに、私が出来ることって何だろう………」
美寧が呟く。兄のような仕事は自分には出来ないけれど、それでも何か自分に出来ることがないだろうか。父が喜んでくれて、少しでも疲れが取れたらいいのに、と。
「また、紅茶を淹れてさしあげたら良いのではないでしょうか?」
「紅茶……?」
「ええ。昨日もお父さまはあなたが淹れた紅茶をとても喜ばれていましたよね。お母さまと同じ味だということもありますが、やっぱり自分の娘に淹れてもらうお茶は格別に美味しいのではないでしょうか?」
「そうかなぁ………」
「はい。それに一番はやはり『あなたの顔を見る』ことだと思いますよ?これからは、時間を見つけて出来るだけ顔を見せるようにしましょうね」
「そうだね。そうする!———あっ!」
思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて口元を押さえる。
「どうかしましたか?」と訊ねられ、美寧は少し前から考えていたことを思い切って口に出すことにした。
「………ねぇ、れいちゃん」
おずおずと名を呼ぶと、怜が「ん?」と首を傾げて顔をのぞき込んでくる。
「お願いがあるの………」
怜が軽く目を見張る。こんなふうに美寧が「おねだり」をするのが珍しいからかもしれない。
「なんでしょう?」
その至近距離での微笑みに胸がトクンと小さく音を立てる。美寧は視線をさ迷わせたあと、怜をまっすぐに見つめ口を開いた。
「約束を、………約束を変えたいの」
「約束?」
「うん。れいちゃんと前にした『約束』。本当は私……ずっと変えてしてほしく、———んんっ」
言葉の途中でいきなり唇を塞がれた。
開いていた口からぬるりと侵入してきた舌に、咥内をぐるりと掻き回わされる。
「ぁんっ、」
くぐもった声が漏れ出たその拍子に、奥にあった舌を吸われて引きだされ、逃がさないとばかりに絡め取られた。反射的に体を引こうとしたが、頭の後ろを押さえる大きな手にそれを阻まれる。
(え、なんで!?いきなり、どうしたの、れいちゃん!)
怜の舌が擦りつけるように美寧の舌をなぞっていく。表も裏も、先端も付け根も全部。そのたびに口から声にならない音と息が漏れ出し、ぞくぞくと甘い痺れが腰から這い上がってくる。
“いつもの合図”もなく、突然始まった濃厚なくちづけは、美寧の息が上がりきった頃やっと収束した。
そして、美寧の口角からこぼれた唾液。どちらのものともつかないそれを、怜の唇が吸い取っていく音を聞きながら、美寧は自由になった口で大きく息を吸いこんだ時———。
「ぅにゃっ———!」
美寧の体はソファーに倒れ込んでいた。