耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「自分の作ったものを食べた誰かが『美味しい』って言ってくれるのって本当に嬉しいことだよね?」

美寧は怜と暮らしたこの数か月間で、自分が作ったものを誰かに「美味しい」と言ってもらえることの喜びを知った。
だからこそ気が付いた。もしかしたら自分は怜からその喜びを奪ってしまっているのではないか———と。

「でも私ね………それと同じくらい、誰かにれいちゃんのお料理を『美味しい』って言ってもらえるのも嬉しいの」

彼の料理が褒められるのは、自分のことのように誇らしい気持ちになる。

父や兄にももっと怜の料理を食べて欲しい。
自分のことを救った彼の料理が、どんなに美味しいものなのか、どんなに優しいものなのか、を。それを知ってほしいのだ。

「いいんですか?『約束』したのに………あなた以外の為に料理をしない、と」

「う、うん」

ほんの一瞬、美寧の目が泳いだのを怜は見逃さなかった。伺うようにのぞきこまれる。

「ミネ———本当に?」

「………ほんと、はね…」

「はい」

「本当は、私以外の女の子がれいちゃんの作ったお料理を食べるのは、少しいやかな………」

「そんな予定もつもり(・・・)もありませんよ?」

「うん………でも、これから先のことは分からないでしょう?もしかしたらお父さまやお兄さまとお会いするときに、他の女性がご一緒するかもしれないし………。でも、それよりも、れいちゃんが好きな時にお料理が出来ないのはもっといやなの」

「ミネ………」

「………本当は少し前から考えてたの。れいちゃんはお料理をするのが好きなのに、私との約束のせいで気兼なく好きなことが出来ないなんていやだな、って」


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