耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
美寧の説得になかなか首を縦に振らない怜。
美寧は少し躊躇ってから、眉を下げたままの怜に言った。

「それに私も『約束』ちゃんと守れなかったから………」

「それは、」

「分かってる。あれは『キス』なんかじゃないって———でも、れいちゃんだけが完璧に私との『約束』を守らないといけないのは、なんだか違うなって………」

「『完璧』ということはありませんよ?おじいさまの家でみんなに朝食も作りましたし、クリスマスに聡臣さんが来た時に彼は俺の料理を食べてます」

「おじいさまの家では、私が『みんなに朝食を作りたい』ってお願いしたからでしょ?クリスマスの時は私がお兄さまを誘ったし………。それにあれは、私たち二人のための料理でしょ?お兄さまのために作ったわけじゃないもの」

怜は内心少し驚いていた。美寧がそこまで深く考えているとは思わなかったからだ。

「れいちゃんのお料理は、あれからずっと『私のため』だった。だかられいちゃんは約束を破ったりしてない」

「………」

実は美寧の言う通りで、怜は美寧に『お願い』された時だけ、他に料理を振舞っていた。結局は、『美寧のための料理』だ。

怜は自分が『約束』を律儀に守っていることを口に出さなかったのに、美寧はそれをきちんと理解していた。彼女のことを甘く見ていたのだと、怜は反省する。

すると、美寧が小さな頭を傾け、怜の顔をのぞき込みながら言った。

「もういいかなって思ったの………」

「もういい?」

「うん。これからずっと一緒にいるんだもん。私以外の人のためにお料理をすることがあってもいいと思う———ううん、そうして欲しい」
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